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4と6 ~バトルロワイアル同盟~ ◆IRxFfnsX8c 最初は、その携帯電話を産廃同然だと毒づいた。 何しろ、通信機能は使えない。 圏外というわけではなく、元々備わっていないようだ。 そしてそのメモ機能にも何も記されていないだろうと思っていた。 「……【地図に記されたランドマークに到達する】……ねえ」 その名は『捜査日記』 刑事課長である来須圭悟が、部下から報告される捜査情報の全てが事前にわかる携帯電話。 一人でも多くの犯罪者をボコってやるために刑事になった彼に相応しい『未来日記』だ。 しかし『ゲーム』の中で彼は我欲に走り、未来、そして刑事としての己をねじ曲げた。 結果、捜査権限を失い日記は白紙となった、はずだった。 とは言え、今の結果も非常に頼りないものではあるが。 ――まあ、もとよりその機能は期待していなかった。 もしその事件がなかったとしても、足となる捜査官たちがいないこの状況では能力を万全に発揮できないだろう。 添付された説明書によるとこれはレプリカであり、予知能力が弱まる代わりに『日記を破壊されると所持者も消える』という弱点も消えているという。 彼にとっては吉報である。予知自体が使えないならば少しでも不安要素はない方がいい。 「雪輝、我妻、9th……あいつらにとってはどうだか知らんが」 名簿に記された54人のうち知り合いはその3人。3人とも能力は違えど未来日記所持者である。 あと、『天野雪輝』のすぐ下に書かれた『戦場マルコ』という名は捜査の際に何度か聞いた覚えがある。有名なチンピラだ。 新たな『ゲーム』――バトルロワイアルの参加者が己の欲望のために争う者だという謎の男の言、 そして己も含めた規則性からすれば、彼も未来日記を所持しているはずだ。 「恐らく7thあたりか」 あたりを付ける。そして何番目であるにしろ、警戒するに越したことはない。 「雪輝はともかく我妻は危険だな……ただでさえ危ういのに、雪輝と切り離されたら話が通じん。9th……雨流はまだ話がわかるんだが」 そして知り合いをそのように分類し、しばし思案する。 支給された道具のうち、武器らしきものは大型のカッターナイフ。 あと武器と呼べるのは己の経験とこの頼りないレプリカの未来日記。 結論。 「動いてみなけりゃわからねえ、か」 刑事課長でこそなくなったが、駆け出し時代は足で稼いだものだ。 この日記も『捜査のため動いた結果』を現したものだろう。 「……北だ」 月に白く照らされた砂地を革靴が踏みしめた。 目印ひとつない砂漠をコンパスを頼りに進む。地図によると東および南は山になる。 地図の端になるこの箱庭の果てがどうなっているか興味がない訳ではないが、そこにある情報は少ないと考えるべきだろう。 この砂漠にあるランドマークといえば北西のオアシス、南東の石造りの建造物——遺跡か何かだろうか。 そして少し苦しいが北と西にある他地区との境界らしい川とそこにかかる橋、といったところ。 要するに、ランドマークにたどり着くなら北へ行けば最低でも川、うまくいけばオアシスに当たり、そこには人がいるかも知れない。 遺跡も心惹かれるが、他からのアクセスが悪すぎるし、遺跡の調査は刑事の管轄外だ。 彼の今の目的はこのバトルロワイアルの捜査をすることだ。 主催者はその言とそれを裏付ける実力から、まさしく『神』と呼ぶに相応しい力を持っているということになる。 『死ぬはずだった』はずの彼の身は五体満足だった。我妻由乃に撃たれて吹っ飛んだ左耳も綺麗に治っている。 あのデウス・エクス・マキナが協力、或いは『ゲーム』の趣旨替えをしたのかもしれない。 ――しかし、捜査をしてどうする? そんな考えが来栖の脳裏をよぎる。 12人の未来日記所持者による殺し合いのゲーム その最初は宣言通り雪輝を保護しゲームをぶち壊しにするのが目的だった。 このバトルロワイアルという名の『ゲーム』前より遙かに厳しい。 主催者どもをボコッてやりたい、という意志はある。 しかしこの冷たい首輪もある。 そして、知っている――――他人を押しのけ、殺し、神になってまで叶えたいという願いが、彼にも確かにあったことを。 「……お」 丘陵の上端から恐る恐る様子を伺うと、オアシスを発見した。 やはり『捜査日記』の記述通りになった。 レプリカに落としこむ際に仕様が変更され、警察の捜査状況から来栖自身の捜査情報が記録されるようになったのだ。 オアシスの草地に腰を落とし――無論油断することなく日記を再び検める。 【不審人物を発見。錯乱し襲いかかってくる】 「不審人物……? 誰もいないぞ?」 身を起こし注意深く見渡す。人影はない。残るは―― ——水面から何かが飛び出した。 そしてそれはそのまま来栖の顔を掠め、赤い痕跡を残す。 もう少しずれていれば再び左耳が吹っ飛ぶ羽目に、更に悪ければ眉間に穴が空いていた。 「これは水……ウォーターカッター!?」 工業用とは、同じカッターでも随分な差別があったものだ。 「あなたの世界ではそう言うのですか?」 水泡に包まれた少年がオアシスの水面に立つ。 昔の漫画の忍者のようだな、と考える。 未来日記に因果律、異世界に新しい『ゲーム』に、これで忍者がいたところで不思議ではない気がした。 よく見ると付き従う異形の姿もあり、それも妙に忍者じみていた。 「ですがこの子はハルワタートといいます。そして僕はノール」 「……来栖。来須圭悟だ」 幾重もの水をまとった中性的な外見の少年。 似ているわけではないがどことなく雪輝を思い出す。 「クルスさんも参加者……なんですよね?」 「ああ」 「ということはあなたも殺し合いを?」 「……まあな」 最初の説明であったし嘘をつくよりはマシだろうとそう答えた途端、ノールの双眸から大量の涙が溢れ出した。 「嗚呼、何て業が深いのだろう! 僕たち防人だけでなく、争っている人がこの名簿の人数分も!」 少々自分に酔っている発言と共にハルワタートが活動を開始した。 「本当は戦いなんてしたくないけど……まして護神像を持たない人相手だけど……クルスさん、ごめんなさーーーーーーい!!」 大量の浮かぶ水弾が一気に来栖に襲いかかる。 横に飛び回避するが、ひとつが腹部に深く当たる。咳き込み血を吐く。 「ガハッ!」 (!? そのまま貫いて痛みもなく殺してあげるつもりだったのに! ハルワタート、調子が悪いのかい?) 初期位置が味方したこともあり、ハルワタートが万全の状態で戦えるようオアシスを陣取ることに成功したのに。 膝を付きつつも強い眼光で来栖が睨む。 「ひとつ聞いていいか? ……お前がそうまでして叶えたい『願い』って何だ?」 「……弟のミールが機械病に……うっうっ。だから僕は兄として出来る限りのことをしてあげたいんだ!」 来栖の心に楔が打ち込まれる。 来栖曜――彼の息子であり、医者にも匙を投げられ余命3ヶ月と判断された。 そのことが『ゲーム』自体の結果にはそれほど興味がなかった彼を、神に続く道へと走らせた。 間違っているのはわかっていた。だから白紙の日記を見た時、溜め込んだ鬱屈から解放された真っ白な気持ちだったのだが。 (まずいな。こいつや雪輝を助けてやりたい所だが……) 機械病。知らぬ名だが字面からして危ない雰囲気の病気を抱えた弟のため戦いを決心した少年。 しかしその望みを想うと自らの望みも膨れ上がってくるのだ。 ムルムルがいたならばその矛盾をからかうのだろう。 来栖同様回想が終わったノールは再び攻撃姿勢を取る。。 「ううっ……水弾がダメでも諦めないぞ! そうだ、溺れさせてしまえば……」 「!! 待て、ノール。俺と同盟を組まないか?」 これは天野雪輝や我妻由乃、雨流みねねにも仕掛けた勝利への希望である。 「同盟?」 「ああ。見るとそのハルワタート……だったか? 水のある場所が得意と見た。それならオアシスより水量の多い川の方が真価を発揮できるだろう」 「川……この青い線……それが全部水、ってことですか? ああ、嬉しそうだね、ハルワタート」 「ここから北上する。砂漠がしばらく続くが、川につくまでの間のバックアップは俺に任せろ」 「クルスさんがそんなことをする必要は……ハッ、これがお持ち帰」 「んなわけあるか。お前には川を行き来しながら情報を集めてほしい。そして12時間後、再びこのオアシスに集合し、情報交換を行う」 「クルスさんはその間……?」 「中央地区のどこかの市街地にいくさ。人も集まってくるだろう……血を見ることになりそうだがな」 ノールもオアシスに閉じこもっていてはダメだと薄々感づいていた。 だから、了承した。 そしてお互い「残り人数が少なくなったら同盟を破棄する」ということも視野に入れていた。 が、それは決して表に出さなかった――ノールの大粒の涙以外は。 連れ立って歩き出したとき、また一度捜査日記に目を通す。 【川を発見。ノールによると水質は良いようだ】 ――――やはり捜査員が増えると日記の記述もちょっとはマシになるようだな。 他にも同盟相手を探した方が良さそうだ。出来るなら雪輝や雨流がいい。 この日記が真価を発揮するのはいつになるだろうか。 【F-6(オアシス周辺)/1日目/深夜】 【来須圭悟@未来日記】 [状態]:健康。腹部に打撃、左頬に切り傷あり。 [装備]:大型カッターナイフ@現実 [道具]:基本支給品、捜査日記のレプリカ@未来日記、不明支給品0~1(本人確認済み。武器はないようです) [思考・状況] 基本行動方針:バトルロワイアルの全貌を掴みたい。優勝は……? 1:集団や同盟関係を作りたい 2:天野雪輝は保護対象、雨流みねねは交渉する、我妻由乃、戦場マルコを警戒 3:ノールにやや共感 【ノール@waqwaq】 [状態]:健康 [装備]:ハルワタート@waqwaq [道具]:基本支給品、不明支給品0~1 [思考・状況] 基本行動方針:優勝狙い、ただしなるべく大人しくする 1:バトルロワイアル……何て業が深いのだろう! 2:ハルワタート、元気が無いなぁ 3:とりあえず言われたとおり川近辺を見まわる 【捜査日記のレプリカ@未来日記】 来須圭悟が未来に置いて捜査する、または提供される情報が少し書かれる。 壊れても来栖は死なない。また、携帯電話としての機能は使えない。 【大型カッターナイフ@現実】 安心と実績のオルファ式。結構切れる。 その気になれば人を殺せるが、リーチは他の刃物に比べ短い。 【ハルワタート@waqwaq】 防人の専用武器。意思疎通すれば周囲の水や空気中の水分を操ることが出来る。 また、合体することで威力が増す。 A Boy(?)Meets A Girl(?) 投下順 赤龍激突 A Boy(?)Meets A Girl(?) 時系列順 赤龍激突 GAME START 来須圭悟 誰かの願いが叶うころ GAME START ノール
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DOLバトルロワイアル2ndの第一回放送終了まで死亡者リスト DOLバトルロワイアル2nd第二回放送終了までの死亡者リスト DOLバトルロワイアル2ndゲーム終了までの死亡者リスト
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私がトーキョーに送ってあげる ◆xmy4xBA4UI 魅力的な鞄だった。 見た目はごく普通、いや、むしろ若干趣味が悪いと言っていい。 少なくとも良家のお嬢様であるルイズが、人参のアップリケ付きの鞄を喜んで持ち歩こうとは思わない。 デザインセンスに優れた鞄なら、実家に帰ればいくらでも手に入るし、その意味で、この鞄は全く魅力的ではない。 しかしながら、その見た目を補って余りあるモノが、これには付いていた。 名前は『秘密バッグ』と言うらしい。何とも投げやりな名前だが、機能は投げやりじゃない。 ルイズが鞄の中に手を入れると、手はどこまでも入っていく。 小さな鞄で、大きさはルイズの膝に乗るぐらいでしかない。 外から見たらどう見ても肘まで入るかどうかも怪しいサイズだが、そんな外見を無視していくらでも腕は入っていく。 腕の付け根、肩のあたりまでどっぷり腕を差し込んだルイズはそこから、ぐるぐる腕をまわして鞄の中を漁る。 鞄の中、と言っても正確にいえば中ではなく外だ。 鞄の中に入ったかと思えば、外に出ていた。何を言っているのか分からないと思うが、まー、そんな鞄だ。 とまれ、鞄の中だか外だか分らない奇妙な空間から、ノートを一冊取り出してみる。 まだ使ってない真新しいノートを一冊、鞄の中から取り出した。 「…………特に不思議なところはないわね」 ざっと見まわしてみると、やたら上質な紙を使っていて手触りや透き通るような白さが特徴的なこと以外、目立った特徴はない。 もっとも、その白さや手触りもルイズが住んでいたハルケギニアの工学技術が低いから特別に見えただけで、使い魔の平賀才人が見れば、どっからどう見ても普通のノートにしか見えなかったろう。 「他には何かないかしら」 再び、鞄の中をまさぐってみるが、大したものはなさそうだ。 小さな鞄を開けて、中を直接覗き込んでみると、そこには女の子の部屋があった。 どうして、女の子の部屋だと思ったかというと大きめの勉強机と、可愛らしい人形がそこに置いてあったから。 とりあえず、殺し合いに役立ちそうなものはかけらも見当たらない。 それに、不思議なことに、いくら鞄の中を探っても部屋の外には行けないのだ。 どうもこの鞄は『ルイズのいる場所』と『名も知らぬ女の子の部屋』を繋ぐ機能しか持っていないらしい。 「不思議な鞄よね……」 不思議なことは他にもある。 なんと、取り出したアイテムを戻すことが出来ないのだ。 説明書には確かに「アイテム取り寄せ」と『だけ』書かれているから、まぁ間違いではない。 しかし、それにしたって不思議すぎる。 一度は向こうから取り出せたアイテムではないか。戻せてもよさそうなものだ。 「ますます不思議ね」 人が殺されたばかりだというのに、ルイズの好奇心は高まるばかり。 いや、むしろ人が殺されたばかりだからこそ、ルイズの好奇心は高まっているといってもいいかもしれない。 なぜなら、このアイテムは…… 「でもさ、これって……要するに空間を移動できるマジックアイテムってことよね?」 剣と魔法の世界に住む少女らしい理解の早さ。 そう、だからこそ、ルイズはこの鞄に魅力を感じたのだ。 今自分たちは、殺し合いを強制されている。 自分は、そんなものに参加するつもりなどさらさらない。 幼い子供を殺しておいて、偉そうに命令する……あの所業、あの態度、全てがルイズの癇に障った。 かといって、彼女には何もできない。 本当の意味で何もできない。 もしも彼女が、素直な少女ならば、ここで怖がることもできただろう。 泣き叫び、狂い、人殺しにでも走ろうか。あるいは、感情を狂わされ、笑い叫びながら自殺でもしてやろうか。 しかし、ルイズにはそんなことさえできなかった。 『残念なことに』彼女は非常にプライドが高かったのだ。 だからこそ、人が殺される瞬間、首輪が爆発される瞬間を見ても、悲しみと怒りが湧いてくるだけだった。恐怖は湧いてこなかった。 しかし同時に、矛盾しているようだが、彼我の戦力差も自覚した。 首輪をはめられた状態では、自分には何もできない。飼い主と飼い犬の関係が、今の自分とV.V.のそれだ。 この状態ではとても、戦えたものではない。 許せない、でも戦えない。 そんな中ルイズが考えたのは、外の世界へ応援を要請することだった。 「これがあれば、それも難しくない」 ルイズは大きな危機の中に立たされ、同時に物凄いアイテムを渡されたことで、危機感にも負けないほどの正義感を芽生えさせていた。 そう。 このアイテムの原理を解明できれば、殺し合いを止める決定打を放つことになるのだ。 首輪をつけて、変な場所で殺し合わせる。 しかし、そこにトリステイン魔法学院の先生方が来たらどうなるだろう。 当然、止めてくださるに決まっている。トリステインのメイジたちは、こんな殺し合いに負けるほど誇りを失ってない。 「そうよ、あんなの絶対、絶対に許さないんだから!!」 自分には戦う力がない事ぐらい自覚している。 サイトに守ってもらえば、何とかなるかもしれないけど、それだってなんか悔しい。 絶対、絶対、絶対に自分の力で解決してみせる。 そして、この鞄の仕組みが分かれば、それは決して難しい事じゃない。 鞄をよく見れば、人参のアップリケが付いていて、その近くにヴィオラートと書かれている。 どうやら、これはヴィオラートという持ち主がいた鞄らしい。 それにいかにも手作り感漂うアップリケを見るに、おそらくはヴィオラート本人が作った鞄だろう。 人が作った鞄ということは、必ず人が理解できるメカニズムをもって制御されているに違いない。 だとしたら、姿知れぬヴィオラートに出来て自分に出来ない理由があるだろうか。 いやない。 ルイズはかぶりを振って、高まってきた正義感を強く持ちだす。 「そうよ、もう……もう、これ以上殺し合いなんて絶対に許さない。首輪をつけて、殺し合えなんて貴族を何だと思ってるのよ!!」 「そうそう、許しちゃいけないよ!! アハハハハッ」 「え??」 高ぶりも最高潮に達した正義感。 そのルイズのそばに、一人の男が現れていた。 (気付かなかったわ……) 鞄漁りに夢中になりすぎた。 気がつけば、白紙のノート以外にも鉛筆やらボールペンやらが地面に転がっている。 慣れていないとはいえ、殺し合いの中、不用心すぎたとルイズは後悔する。 「君、名前なんて言うの? あ、俺は三木」 「る、ルイズよ……」 大柄の男・三木は半袖シャツとジーパン姿。 ハルケギニアに来たばかりのサイトとほとんど同じ格好をしている。 もちろん、サイズはまるで違うのだが、それでも恰好から彼も日本から来た人間なのだろうと推測できる。 いやしかし、それよりも正義感高ぶるルイズには、一つだけ気になることがあった。 「ナハハハ、ルイズってのか。変わった名前だなァ」 「ミキの方が変わってると思うけど……、ってか、アンタさっきから何ずっと笑ってんのよ」 「ナハハハ、ネがカルいからね」 「だから笑うな! ひひひひ人が死んでるのよ、分かってるの? 事件なのよ!!」 「あぁ、そういえばそうだったね」 顔はいい男だ。 筋肉質の体も悪くない。きっと、ツェルプストーならすぐにでも手を出すだろう。 しかし、笑うとは不謹慎すぎやしないか。湧き上がる不快感を抑えつつ、ルイズは念のため、男に確認する。 「い一応聞いておくけど、あんたは殺し合うつもりなんかないわよね?」 見た目、男は武器を持っていない。半袖の服は肘から上を完全に露出させており、彼が武器を持っていないことを示している。 持物と言えば、背中に背負ったデイパックのみ。その中に支給品の武器があったとしても、すぐには取り出せないだろう。 「少なくとも『殺し合う』つもりはないよ」 『殺し合う』の部分に若干強調がかかっていたことにルイズは気づくこともなく、単純に男が殺し合いに参加しない人間だと解釈した。 (そう……なら笑いすぎなのは、精神をやってしまったからなのかしら? 当然よね、あんなのを見たら誰だって……) 「ルイズちゃんだったね? 君は殺し合うつもりあるの?」 「ある訳ないじゃない!!」 「あれま、そうなんだ」 何を当たり前な。 この男は、笑ったり、当然のことを言ったり、どうにも要領を得ない。 よほど混乱しているのだろう。それに、この男、どうにも見た目に違和感がある。何とも言えないのだが、何かがルイズと違う気がする。 「と、とにかく、アンタ殺し合うつもりがないのなら、今すぐこの場から逃げなさいよ」 「どーやって?」 「それはね……、このバッグを使えば出来るわ」 「へぇ、すごい」 男はルイズの行動にイチイチ、大げさなリアクションを取ってくる。 いい顔をしているのだが、表情の作りがオーバーすぎて、どことなく不自然で、何となく不気味だ。 「このバッグはね、遠くにあるものを取り出すことができるのよ」 「すごいね」 「だから、アンタを今すぐ元の場所に戻してあげることができるわ。殺し合いなんかない日常にね」 「すごいね」 目が笑ってない。 顔と口だけで笑顔を作って、男はルイズに笑いかけている。 (なななんなのよ、コイツは……せせせっかく、日常に戻れるのよ) もちろん、秘密バッグの仕組みが分かってないのだから『今すぐ』戻ることなんか出来やしない。 ほんの少し、見栄っ張りのルイズが嘘を吐いてしまっただけのことなんだが、それでも、男の不自然な笑顔は無性に腹が立つ。 「あ、アンタねぇ……」 「アハハハッ、ごめんねェ。でもさ、ルイズちゃん少し勘違いしてるよ」 「何を勘違いしてるってのよ?」 「俺は『殺し合う』つもりはないって言ったんだよ」 そう言った瞬間だった。 男の両腕がダラリと伸び、まるで箸から滑り落ちた餅のように地面にボトりと着いたのだ。 「な、何よそれ……」 人間の腕が、粘土のような質感を持ち、突然のびて地面に届く。 ルイズの目の前で、あり得ない現象が展開されている。三木はそれを気にする風もなく、笑顔のまま話を続けてくる。 「俺や後藤さんが、人間たちと『殺し合う』ことなんて出来るわけないんだよね…… ま、田村さんなら分からなくもないけどさ……あの人頭よさそうだし」 「な、何突然言ってるの? アンタ帰りたくないわけ?」 「帰るってどこに?」 「アンタの家よ、帰る場所ぐらいあるでしょ!!」 「うーん……、どうかなぁ……別にどこにも行く必要ないしねェ」 言うや否や、男の右腕が突然持ち上がり、一瞬のうちにルイズを叩きつけた。いや、斬りつけた。 先ほどまで粘土だったそれは、ルイズの見ている前で、ルイズの目にもとまらぬスピードで、いつの間にやら剣に変わっている。 顔の皮一枚を掠ったその攻撃に、ルイズは瞬き一つすることも出来なかった。 「あアンタ…………」 続けざまに降りかかる刃は、ルイズの動体視力を優に超えている。 やわらかい粘土のような質感を持った腕が一瞬のうちに硬質化してルイズを切り刻んでいく。 (あ、ああぁあ、熱い……、あつい、あついよ…………) 理不尽すぎる突然さ。 ルイズは恐怖心も、戸惑いも、何一つ感情らしきものを動かせない。 いきなり斬りつけられて、感じるものと言えば、単純な痛みのみ。 男の攻撃は、文字通り雨のようにルイズに襲い掛かかり、その表情は先ほどまでとうって変わって能面のような無表情だ。 (ああぁあ、何、何………………何なの、さっ……きまで……) まるで別人という表情を見せる三木だが、元より表情豊かな外見は作りものにすぎない。 『餌』を食べる時にニコやかな笑顔は必要ない。 「……さァて、そろそろ食べるかなァ?」 (…………、な、何、ねェ……なにが…………) 斬り刻まれすぎて、痛みを感じすぎて、何が何だか分からない。 (なに、なに、いったい…………) 恐怖すら感じることなく横たわるルイズに三木が近づいてくる。 すでにルイズを死体と思っているのか、攻撃の手は止まり、ゆっくり近づいてくるのみ。 そんな、三木の顔が、両腕と同じく粘土細工に変わり、大きく変形する。 まるで、『口だけ頭』 頭全体が口になり、ルイズをゆっくり飲みこもうとする。 と、その時。 三木の目の前、ルイズの背中に背負われたデイパックから一筋の光があふれ出した。 「えェ…………」 あふれ出した光の束の中央。 1瓶の壺が、ルイズの頭の上にくる。 全自動で動く壺、ルイズの理解も、三木の理解も超えている。 唖然とする三木。 全身血まみれで動けないルイズ。 一匹と一人が見つめる中、壺から一筋の液体が降り注いできた。 「な、何が…………」 降り注ぐ液体は、ルイズの全身を覆い、瞬く間にその傷を治していく。 その様に、ルイズも三木もただただ動きを止めて見守るだけ。 気がつけばルイズの傷はまるで無かったかのように癒え、破れて原形をとどめていない服の下に、彼女の白い素肌が覗くようにまでなっていた。 「う、嘘…………」 「な、何だよそりゃ……」 お互い理解できていない。 しかし、ルイズにとっては幸運以外の何物でもない。 そう思って、ルイズは面をあげる。 するとそこには、三木が……いや、人間ではない、何かがいた。 (何コレ? 口だけ頭…………) (触手だけ頭? ………ああぁあああああ、何、何なの……) 「いやあああああああああああああああああああああああああぁあああああああああああ!!!」 逃げた。 一目散に。 何も考えずに、ただひたすらに逃げた。 貴族の誇りだとか、ゼロの二つ名だとか、ガンダールヴを使役しているだとか。一切関係なかった。 ただひたすらに、走っていた。 「なに、何、何なのよ……」 自分が話していた男だと思った生き物は、人間ですらなかった。 しばらく走り、ルイズは一軒の民家の二階に走りこむ。 ガクガクふるえながら、先ほどの男を思い出す。謎の壺で助かったものの、突然殺されそうになったのだ。 何が何だか分からない。助かったことさえ理解できないのだから、素直に喜ぶこともできない。 「何、あれは……何、一体何なの…………」 ただひたすらに怖かった。 人間でないものと、人間同士の殺し合い。どうあがいても、ゼロの自分には勝ち目はない。 「サイト…………」 民家の二階から、恐る恐る外を覗く。サイトさえいれば、あいつにも…… いや、ダメだ。サイトだって敵わない。だって、あれは化け物なんだから。 そんなとき、窓の外に化け物が走っているのが見えた。 ほっほと、鈍重な動きを見せながら、三木と名乗っていたころと同じ頭を見せながら。 「こ…………こわい、…………」 相手は気づいていないのに、ルイズは恐怖で体が動かない。 カーテンを閉めるのも忘れ、目を背けることすらできず、ただじっと三木を見つめるばかり。 「…………やっぱり、俺と人間じゃ『殺し合い』にならなかったかァ……」 外から化け物の声が聞こえる。 そういえば、最初に会った時『殺し合う』つもりはない、と言っていた。 あれはこういう意味だったのだ。殺し合いではなく、虐殺をするつもりだと。 「しっかし、あの娘も最初は強そうにしてたけど、突然逃げるんだもんなァ…… 殺し合いは許さないんじゃなかったのかな、言ってることが違うじゃないか」 そのつもりだった。 しかし、自分には無理だ。相手は化け物なんだから、どうしようもないじゃないか。 自分だって、サイトだって、タバサだって、殺されてしまうんだ。 どうしようもないじゃないか、あんな化け物。 「でもま、人間にしちゃよくやった方か、あの壺が無かったら食べられたと思うんだけどねェ……」 そうだ。あの壺のおかげで、自分はかろうじて命をつないでいる。 一体あれは何だったのだ。 ルイズは恐怖に震える体を無理やり動かしながら、命の恩人を確認すべくデイパックを再びまさぐった。 何も分からない支離滅裂な状況を、せめて1つだけでも理解しよう。 あの壺が自分の支給品なら、説明書ぐらい付いているはずだ。 そういえば、殺し合いが始まった直後は『秘密バッグ』の性能に驚かされて、他は名簿ぐらいしか確認していなかった。 ルイズは、デイパックの中にある壺の説明書を見つけ、それを読んでみる。 『エリキシル剤×2:HP超回復、MP超回復、LP超回復、生きている』 という表題の説明書。 中を読んでみると、どうやらこの支給品は使用者の傷を全快してくれるらしい。 さらに、これは『生きている』ものらしく、使用者の体力が20%以下になったとき、自動的に発動するのだそうだ。 個数は二個。さっき一個使ったので、残りは一個。 窓の外を見れば、化け物がまだうろついている。 これがあれば勝てる? これをサイトに使わせたら勝てる? (…………ば、馬鹿……私ったら何考えてるのよ) 無茶に決まっている。いくらサイトでも、回復アイテム一個では勝ち目がない。 もう一つの支給品、『秘密バッグ』にしたって、戦闘では使えない。 駄目だ。 (助けてサイト…………) 矛盾するような祈りを込め、ルイズは部屋の中でガタガタと震えている。 そんな時だった、ルイズの目の前に最後の支給品が飛び込んできたのは。 それは、彼女も一度だけ見たことがあるもの。 それは、彼女の使い魔が一度だけ使って見せたもの。 それの前で、彼女は一度、貴族の誇りを見せたもの。 「こ、これは……まさか……」 異世界トーキョーから来たアイツの前で、一番最初に見せた自分の勇士。 「さ、サイト……」 自分の最後の支給品は、サイトと共に闘った初のミッション。その時に、決め手となった武器。 サイト曰く、ロケットランチャー。伝承曰く、破壊の杖。 そうだ、あの時自分は叫んだではないか。 『魔法を使える者を貴族と呼ぶんじゃない。敵に後ろをみせない者を貴族と呼ぶのよ!』 と。 巨大なゴーレムにもひるまず、立ち向かって行ったではないか。 破壊の杖を手に取り、ルイズは思い出す。 そうだ。 自分はメイジだ、自分は貴族だ。 相手が人食いの化け物だろうと関係ない。だからどうしたというんだ。 メイジの杖は、貴族の誇りは、そんなにも容易く折れてしまうものだというのか。 (いいえ、違うわ) 破壊の杖を右腕に、秘密バッグを肩に、エリキシル剤を背中のデイパックに背負い。 ルイズは再び叫ぶ。 「そうよ、『魔法を使える者を貴族と呼ぶんじゃない。敵に後ろをみせない者を貴族と呼ぶのよ!』」 ◆ ◆ ◆ 民家を出たルイズが、三木を見つけたのはすぐのことだった。 もう逃げるつもりはなかった。究極のマジックアイテムと、サイトがくれた誇りが自分にはある。 「あれま、逃げたんじゃなかったんだ」 「……」 「まぁ、その方が都合いいけどね」 「…………アンタに一つ言っておくわ」 「?」 「アンタは一時とは言え、私の誇りを砕いてくれた。貴族の私が、敵に背中を見せて逃げ出してしまった。 でももう逃げない。貴族としてメイジとして、殺し合いに参加した化け物を見過ごすことはできない!!」 「殺し合いじゃないって、ただの食事だよ」 「問答無用!!」 破壊の杖を右肩に乗せたのが、戦闘開始の合図。 変形する三木の両腕が、幾筋もの刃となりルイズに襲い掛かってくる。 ルイズはその攻撃を無視し、できる限り三木へ近づこうとする。 (破壊の杖は単発。避けられたら終わり) 両腕と違い、三木本体の動きはきわめて鈍重である。 ロケットランチャーの弾を避けられるとは思わないが、それでも慎重を期したい。 避けられなくとも、すばやい両腕で防がれたら一巻の終わりだからだ。 ランチャーの砲身を盾に、三木の攻撃をかわしながら、ルイズはフーケ討伐に向かった頃のサイトを思い出す。 あの頃のサイトといえば、まったくなってなかった。 自分の使い魔だというのに、ツェルプストーに手を出したり、給仕の女の子に手を出したり。 おまけに自分の事をゼロのルイズと大笑い。 使い魔の取替えがきくなら、すぐにでも追い返してやりたいと思っていたものだ。 タバサみたいなドラゴンは無理でも、せめてツェルプストーと同等のサラマンダーぐらいは欲しい。 みすぼらしい服を着て、無礼な平民なんて、使い魔にふさわしくない。 何度も何度も思った。 でも違った。アイツは凄くいい奴だった。 いくつものミッションをこなした今だからこそ分かる。 フーケの時も、アルビオンの時も、アイツは誰より活躍してくれた。 ルイズの、自分の体よりはるかに大きなプライドは、彼の力によって優しく守られていた。 (……でも、アイツは………………) 伝説のガンダールヴだなんて言われても、やっと信じられるようになったばかり。 どこから、どう見ても自分と同年代の普通の男の子。 いくら、伝説の力を持っていても。 場違いな工芸品を操り、並みのメイジを遥かに凌ぐ戦闘力を持っていても。 それでも、アイツはただの男の子。 ルイズだって、考えたことがないわけじゃない。アイツは………… 三木の攻撃は激しさを増し、ルイズはまったく近づけない。 ランチャーを盾にして、攻撃を防ごうと思っても、そもそも三木の攻撃はほとんど見ることすら適わないので、実質防御率は0だ。 でも、不思議と恐怖はなかった。 背中に背負ったエリキシル剤はまだ発動していない。 三木の攻撃は本気には程遠く、だからこそルイズにも耐えられる。 寄生生物にも、かすかに存在する警戒心がルイズへの攻撃を緩めている。 しかし近づけない。この距離と、刃の雨では、ランチャーの照準を合わせることさえできない。 (だ大丈夫、チャンスは来るわ……アイツがエリキシル剤を警戒している限り) ルイズはたった一度だけ、それでも確実に来るチャンスを待つ。 そして、その時は唐突にやってきた。 背中のデイパックから光が漏れる。 その光に三木がギョっとして、一瞬動きを止める。 そのチャンスをルイズは逃さず、一気に三木との間を詰めた。 背中のエリキシル剤が、光に遅れて飛び出してくる。 全自動『生きてるエリキシル剤』はルイズを追尾するが、標的は無視して突き進む。 三木はそんな一人と一個をみて、一瞬どちらを攻撃しようか迷ってしまった。 その迷いこそ、ルイズが求めた天文学的に低い確率の、だがしかし確実に来ると信じたチャンスだった。 「チェックメイトよ」 間合いをつめ、三木の首にランチャーを当てる。 このまま撃てば、首輪は暴発し確実に倒せる。 ルイズはそう信じて引き金を引いた。 ◆ ◆ ◆ 首を破壊された化け物は驚くほどあっけなく死んでしまった。 ルイズは右手に残る確かな感触をギュッと噛みしめるように握りしめる。 「やった……勝った………………」 弾きとんだ場所から、噴水のように湧き上がる鮮血。 人間と同じ真紅のそれを見ても、ルイズに悲しみはなく、大きな達成感のみが彼女の体を纏っていた。 ルイズにはそう、やらねばならぬことがある。秘密バッグの解明だ。 このバッグの仕組みさえ明らかになれば、殺し合いから解放されることも夢じゃない。 ここに連れてこられた、自分やサイト、タバサと言った罪なき人々を救いだすことができる。 その所業は、ヴァリエール家にとってもかつてないほどの偉業。 化け物を除いても50人近くいるであろう被害者たち全員を救済するのだ。 それだけじゃない。 空間を転移するとはすなわち、別の問題の解決をも意味する。 そこまで考えたとき、ルイズの目の前にサイトが現れた。 「さサイト……」 サイトはにこやかに笑ったまま答えない。 「あああアンタね、何やってたのよ、わわ私がヒドい目にあってたのよ。 とんでもない化け物でさ、両腕がこーーなってね」 ルイズの一生懸命なジェスチャーはオリジナルを全く再現していない。それでもサイトは笑顔を崩さずにいた。 「ああそうだ、あアンタ、トーキョーに帰りたがってたでしょ? 帰りたいわよね、そうに決まってるよね!!」 サイトがいくら伝説の使い魔でも自分と同じ年頃の少年。 ルイズだって、考えたことがないわけじゃない。 自分が家に帰りたいと思うことがあるように、サイトだって、時々はそう考えているはずなんだ。 「感謝しなさい、すっごい手掛かりを見つけたんだから」 いや、サイトの場合は、時々ではないかもしれない。 自分は会ったこともないけれど、優しそうな家族が彼にはいたはずなのだ。 そして、その家族はハルケギニアから遠く離れたトーキョーという別世界にいる。 連絡を取ろうにも、全く繋がらない異世界。 学院から実家に戻るとか、そんなレベルではない隔絶感が、孤独感となり、サイトに襲い掛かっているはずなのだ。 「このバッグよ、これの仕組みが分かればね……」 もしも自分が、サイトと同じ立場になったらどうなるだろう。 見たこともないトーキョーの街に、突然放り込まれたらどうなるだろう。 実家に帰ることもできず、学院に戻ることもできず。 会いたい友達もいない。常識さえ通用しない。お金もない、食べ物もない。 ないない尽くしの世界に放り込まれたら、自分はどうなるだろう。 「ねぇ、サイト喜びなさいよ。もうすぐ帰れるのよ、私がアンタを帰してあげるんだから!!」 だけどもう、そんな悩みからも解放される。 「ねぇ、喜びなさいよ。アンタもうすぐトーキョーに帰れるのよ…………」 サイトの表情は笑顔で、しかしどことなく哀しみをたたえたものだった。 【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔 死亡】 ◆ ◆ ◆ ルイズの放ったロケットランチャーは、確かに三木の首を弾き飛ばしていた。 しかし、その結末は彼女の望むものとは大きく異なっていた。 吹き飛んだ三木の首には、参加者全員にあるはずの首輪がなかったのだ。 ルイズは最初から、彼の違和感に気づいていたものの、最期まで首輪がないことは見抜けないでいたのだ。 そしてもうひとつ、首に接近しすぎたため、被弾面積が小さくなり、実質的に三木が受けたダメージが少なくなったことも、彼女の敗因となった。 舞い上がる血しぶきと、打ち上げ花火のように飛び上る首。 それを見て彼女が勝利を確信したとき、『三木』の右腕にいた『後藤』が、三木の支配を逃れ、ルイズの心臓を突き破った。 遅れてやってきたエリキシル剤も、心臓が破られ生命活動を停止した体には効果がなく、ルイズは結局息を吹き返すことがなかったのだ。 「それにしても酷い出血だ……、おい『三木』戻って来い」 右手にいた後藤はすぐさま頭部に移動し、三木を呼び戻す。 「いやぁ面目ない」 「話にならんな、やはりお前は右手でいるのが分相応のようだ『三木』」 「いやでも、あの壺凄かったんだよ」 「壺などどうでもいい、当分は眠っていろ」 そもそも、三木が壺を必要以上に警戒しすぎたことが今回の原因だ。 最初から自分が出ていれば、出血もなく食事に取りかかれただろうに、どうにも三木は信用できない。 まぁ、何事も慣れだと思っているので、いずれは自分と同等の存在になれるだろうが、それはずっと先の話だ。 「…………ふぅ、少し、だるいな」 右手の支配権を取り戻したことを確認し、後藤は体の様子を確かめる。 出血がひどい。前回も三木に任せた時、同じようなことがあった。 とりあえず、手元にある餌を食べ、落ち着くこととしよう。 彼は、かつてルイズと呼ばれた肉塊を口に運ぶ。 それは決して、満足できるものではなかった。 「とてもじゃないが、足りないな……」 ルイズの体は小さい。後藤は寄生生物の中でも図抜けた大食漢である。 おかわりが欲しいな。そう思って彼は、深夜の街を歩くのだった。 【一日目深夜/F-10 地図にない民家の前】 【後藤@@寄生獣】 [装備]なし [支給品]支給品一式、ランダムアイテム×3(本人未確認) [状態]軽度の疲労 [思考・行動] 1 餌が足りないので、おかわりが欲しい。 [備考] 1 後藤には首輪が付いていません。体のどこか別の場所に同等の機能を持つものが付いています。 2 F-10近くにルイズの死体と秘密バッグ@ヴィオラートのアトリエ、破壊の杖@ゼロの使い魔(残弾0)が落ちています。 3 エリキシル剤@ヴィオラートのアトリエはすべて消費しました。 時系列順で読む Back 最初の晩餐 Next 月の光に映る影 投下順で読む Back 最初の晩餐 Next 月の光に映る影 後藤 055 少女と獣 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
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バトルロワイアルを侵略してみた 「ここは一体どこでゲソ~!海の家がないでゲソ~」 触手のような物を頭から垂らした少女、イカ娘。 海の家を探す為に南の海岸線をうろついている。 「クックック。これはいいチャンスかもしれないでゲソ…。 あのドラエモンとかいう海坊主は願いを叶えると言ってたでゲソ。 わたしの地球侵略もあと少しなんじゃなイカ?」 願いを何でも叶えてもらえる。 だったらわたしの真の目的の侵略を選び、人間どもに復讐する。 「ああ~、でもエビ食べ放題ってのもいいかもしれないでゲソね! まぁ、優勝してから考えればいいでゲソ!」 ポケットの中を漁り、名簿を取り出し目を通す。 「千鶴はいないでゲソ。これでわたしの敵は誰一人いないでゲソ!」 千鶴がいないことを確認し、安堵する。 最強、いや最凶の千鶴がいない以上、最早出来レースみたいなもの。 障害となりうるものは無い。 「待っているでゲソ!これよりわたしの真の侵略が始まるのでゲソ!」 その笑い声は月に照らされ不気味なものになる。 イカの少女は、ゲームに乗ることを決意した。 【E-6/1日目・深夜】 【イカ娘@侵略!イカ娘】 [状態] 健康 [装備] なし [道具] 支給品、不明1~3 [思考・状況]0:人類侵略の為優勝 1:千鶴がいなくてよかった ※アニメ一期最終話より参戦 No.005 図書館の謎 時系列順 No.007 Unconnected START イカ娘 No.046 意思持ち支給品はとっても、イナフじゃなイカ?
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価値ある命 ◆ew5bR2RQj. 烈風を纏った日本刀が、上空から振り下ろされる。 それを横に傾けられた西洋刀が受け止め、そのまま剣先へと流す。 が、その斬撃は簡単に受け流せるほど軽くはなく、勢いを完全に殺すことはできない。 西洋刀の使い手――――ミハエル・ギャレットは僅かに押され、何歩か後ずさった。 「オラ、どうした! ヨロイがなければそんなもんかよ、てめぇは!」 「うるさい、ヴァン! 貴様のような奴がいるから暴力が無くならないんだ!」 「ああ、そうかい、だったらてめぇも同類だな!」 後退したミハエルに追撃を加えるため、右足を軸に加速するヴァン。 そのまま日本刀の柄を握り締め、横薙ぎの一撃を繰り出す。 「ぐぅっ……」 今度は西洋刀を縦に構え、繰り出される斬撃を受け止める。 だがやはり全てを受け止めることはできない。 ヴァンの一撃を受け止めた瞬間、仕込み杖を握り締める両腕に電流が走った。 (このままでは……まずい!) ミハエルは額から汗を垂らしつつ、表情を歪めるヴァンを見つめる。 戦況はヴァンの一方的な展開であり、ミハエルは剣戟を始まってから一度も攻勢に移れていない。 理由は一目瞭然だろう、彼らの間には拭い切れない実力差があるからだ。 ヴァンはカギ爪の男に婚約者を殺されて以来、ずっと復讐の炎に身を焦がしていた。 そのために元々優れていた身体能力をさらに鍛え、戦闘経験も数えきれないほど積んでいた。 一方でミハエルはヨロイ乗りの適性があるとはいえ、少し前までは一般人だった少年。 いくら才能があるとはいえ、根底に存在する実力差を覆すことはできないのだ。 さらに彼には、直前の戦闘で負わされた傷や疲労がある。 これが初戦闘であるヴァンとは、コンディションにも大きな差があるのだ。 挙句の果てに彼の得物は、強度が玩具同然の仕込み杖。 ヴァンに支給された菊一文字則宗とは、天と地ほどの差があった。 「チィ……さっきからちょこまかと、守ることしかできねぇのか!」 「くそっ……こんな奴に……」 これだけの劣勢を強いられながらも致命傷を避けていられるのは、偏に才能のおかげだろう。 彼の類まれなる才能は、ヨロイやライダーで培った技術を早くも吸収していた。 そのため実力的に差のあるヴァンの猛撃を、寸でのところで堪えているのである。 「ただ守ってるだけなら、とっととくたばりやがれ!」 とはいえ、守っているだけでは勝つことはできない。 ヴァンの猛撃を捌ききれず、致命傷を負う可能性がある。 かといって捌ききれたところで、攻撃に移れなければ意味はない。 体力の差から先に倒れるのはミハエルである。 このまま防戦一方の状況が続けば、彼のますます不利になっていくだろう。 だが彼とて無策で挑んだわけではない。 確実な勝算を持って、戦いを仕掛けたのだ。 それこそが神崎士郎が開発したライダーデッキの一つ、ナイトのデッキ。 二重の時間制限を課せられているとはいえ、一度変身すれば使用者に圧倒的な力を齎す。 これさえ使用できれば、生身のヴァンを撃破するのは容易いだろう。 が、ナイトのデッキは最後の変身から二時間経過していないため、まだ使用することはできない。 故に彼の考え抜いた作戦は、制限が解除されるまでの時間を稼ぐことだった。 「くっ……せめて東條さんの力を借りれれば……」 理想としては実力者であるヴァンに対し、自分と東條の二人で挑むことだった。 しかし東條は緑髪の女と睨み合いを続け、援護が不可能な状態にある。 結果的にミハエルは孤立し、実力的に数段上であるヴァンに一人で対抗する羽目になってしまった。 「カギ爪の次はあいつかよ、人頼りもいい加減にしろぉ!」 罵声と共に、右斜め上からの袈裟斬りが襲いかかる。 ミハエルは背後に退き、それを回避。 返す刀で繰り出された斬撃を、今度は西洋刀を傾けて受け止める。 「仲間と協力することの何が悪いというのだ!」 「てめぇのは協力とは言わねぇんだよ! 自分じゃ何も出来ないから人を頼ってるだけだ!」 「それの何が悪いというのだ! 人々は協力することで互いの欠点を補い合う、そういうものだろう!」 「何度も言わせんな! てめぇのは協力じゃねぇんだよ! 人の話はしっかり聞きやがれ、甘ったれたクソガキがよ!」 「甘ったれたクソガキだと!? 訂正しろ! ヴァン!」 宇宙空間で戦闘していた時のように、お互いを罵倒する二人。 あの時と違うのは、互いの武器がヨロイから刀に変わったことくらいだろうか。 罵倒の最中にも二人は剣を交え、己の信念を叩き付けている。 金属音が響き、汗が滴り、土煙が舞い、そして火花が散る。 打ち合った回数は三十を越え、ミハエルはその全てを捌ききっている。 膠着状態、そう呼んでも差し支えない状況だ。 そしてその状況を打破すべく、ヴァンが行動を起こした。 「ぐはぁっ!」 脇腹に衝撃を受け、数メートルほど吹き飛ばされるミハエル。 そのまま地面を数度転がり、やがて停止する。 最初は何をされたのか分からなかったが、ヴァンの体勢を見てすぐに理解することができた。 「蹴りを入れるとは……卑怯者め」 「はん、勝負に卑怯もなにもねぇんだよ」 振り上げた脚を戻しながら、ヴァンはミハエルを見下す。 彼は斬撃にミハエルの意識を裂かせた後、死角から蹴撃を叩き込んだのだ。 「だからてめぇは甘ちゃんなんだよ、バカ兄貴が……」 日本刀を構えながら、ゆっくりとした歩調で近付いてくるヴァン。 仕込み杖は蹴り飛ばされた時に、手の届かない位置に落としてしまった。 得物がない状態では、ヴァンを退けることはできない。 この場から逃げようとしても、ヴァンとの距離が近すぎる。 ヴァンとミハエルの運動能力の差では、間違いなく逃げることは不可能であろう。 ――――しかしそれは関係のない話であった。 何故ならミハエルには、逃げる気など最初から無いのだから。 「訂正しろと……言っているだろ!」 ミハエルがそう叫ぶと同時に、伸ばした右手から棒状の物が伸びる。 咄嗟の一撃に虚を突かれ、ヴァンは捌くことができない。 直進する棒は彼の腹部を穿ち、そのまま彼を空中に弾き飛ばした。 「がはっ……てめぇ……」 腹部を抑えながら、ミハエルを睨み付けるヴァン。 当のミハエルは服の汚れを払いながら、落とした仕込み杖を拾い上げていた。 「それは……あの女の……」 「そうだ、これはファサリナさんの三節棍だ」 ミハエルは右腕の服の裾から三節棍を取り出し、ヴァンに突き付ける。 それはミハエルと同様、オリジナル7に属する一人のファサリナが所持する三節棍。 普段は布のような形状のため、非常に携帯性と奇襲性に長けている。 元々これは沙都子に支給された物であり、シャドームーン戦後は東條が所持していた。 二人が彼女のデイパックを開封している時にこれを発見。 ミハエルはそれを譲り受け、万が一の時のために右腕の部分に巻き付けておいたのだ。 「苦しいだろう、ヴァン! 私は的確に急所を突いたからな」 ミハエルが三節棍で突いたのは、人体急所の一つでもある鳩尾。 一度ここを突かれると、数分間は呼吸ができなくなる。 その状態では十分に戦えないどころか、意識を保つことすら難しい。 まさに決定打とも呼べる一撃であった。 「私は同志の夢の妨げになる貴様の存在を許容するわけにはいかない、ここで死ね!」 ミハエルは仕込み杖を振り上げ、動けないヴァンを一瞥する。 そして首元に目掛けて、仕込み杖の刃を振り下ろした。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!」 「ッ!?」 が、ヴァンは菊一文字則宗を構え、首を狙ったミハエルの攻撃を弾く。 意識も朦朧としているはずなのに、彼の一太刀を的確に防いたのだ。 「何故だ……何故意識を保っていられる!」 「残念だったな、俺はカギ爪を殺すまでは寝てなんかいられねぇんだよ!」 続いて、強靭な踏み込みを利用した一閃。 ミハエルは紙一重で回避するが、纏った烈風が彼の肌を切り裂く。 その鋭い痛みに一瞬だけ意識を奪われるが、すぐにまた次の斬撃が迫っていた。 (くっ……やはりファサリナさんのようには上手く扱えなかったか……) ヴァンの猛攻を回避しながら、ミハエルは思案する。 確かに手応えはあったが、致命傷を与えられるレベルではなかったのか。 それとも僅かに鳩尾から逸れていたのか。 どちらにせよヴァンを戦闘不能にすることはできず、今も剣戟は続いている。 しかし若干ではあるがヴァンの動きも鈍くなっているため、先ほどよりも防御は容易い。 相変わらず防戦一方ではあるものの、本来の目的へは確実に近づいていた。 時間制限を課せられたナイトのデッキ。 その時間制限の解除へと。 残り時間、二十分。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 舞台は移り変わり、フォークリフト周辺。 ここでC.C.と東條悟が、ヴァンとミハエルの剣戟を背景に睨み合いを続けていた。 「………………」 二人の間にある距離は、およそ十メートル。 互いの持つ武器から目を離さず、一歩も動こうとはしない。 C.C.が握るのは、振るうことで火球を発射する杖。 東條が持つのは、一見すると日本刀に見間違える銃。 どちらの武器も威力は十分であり、だからこそ下手に動くことはできない。 ヴァンとミハエルの戦闘を動とするなら、こちらは間違いなく静。 隙を見せれば、すぐさま攻撃される。 故に下手な攻撃は、自らを破滅へと誘う引き金と化すのだ。 (………………) 行動という形では表れていないものの、彼らの間では既に数多くのやり取りが行われている。 視線を交わし、牽制をし合い、相手の心理を読む。 言葉にすれば簡単だが、それは非常に高度な技術である。 数百年の人生経験を持つC.C.と、何度も死線をくぐり抜けてきた東條。 この二人だからこそ、行えるやり取りなのだ。 (……やっぱり……おかしいよ……) そんな彼らのやり取りを。近くから眺める者がいた。 二人が対峙している位置から、僅かに左に逸れた位置に停車されたフォークリフト。 その荷台の上で、竜宮レナは彼らのやり取りを観戦していた。 彼女は成り行き上、この場に立ち会うことになった一般人だ。 そしてこの場において、唯一の一般人でもある。 だからこそ彼らが行っているやり取りに、強い嫌悪感を抱いていた。 (なんで……みんな戦い合うの……?) ヴァンとミハエルは剣を交わし合い、相手の命を奪おうとする。 C.C.と東條も物理的な攻撃は行っていないとはいえ、やっていることは同じだ。 彼らは四人とも戦禍の中心を渡り歩いてきたため、人の死は珍しい事ではない。 だがその常識は、平和な日常を送っていたレナとは決して相容れぬものなのである。 (真紅ちゃんが死んじゃったのに……また誰か死んじゃうの?) ついに殺し合いを見ているが嫌になり、レナは視線を逸らす。 逸らした先には、紅の輝きを放つ宝石が握り締められていた。 その宝石は先ほどまで同行していた少女、真紅のローザミスティカだ。 彼女は後藤との戦闘で致命傷を負い、レナを逃がした後で絶命した。 その光景はレナも見ており、彼女に深い悲しみと絶望を与えた。 だからこそ後藤と同じように、平然と他者の命を奪おうとする四人に強い嫌悪感を抱いたのだ。 (この雰囲気に呑まれちゃ駄目だ……冷静になろう) 湧き上がる嫌悪感をなんとか抑え込み、レナは冷静であろうとする。 そうして数秒、彼女はこの場でどう動くべきかを思考し始めた。 (戦闘に参加する? ううん、ダメだ、そんなことをしても意味はない) 最初に考えたのは、戦闘に参加すること。 だが彼女は、すぐにその選択肢を切り捨てた。 まず第一に彼女は一般人であり、実力は四人と比べて大幅に劣る。 部活でサバイバルゲームなどをしているとはいえ、所詮はお遊戯なのだ。 仮に戦闘に参加するにしても、彼女はどちらの勢力にも加勢する気になれない。 ミハエルや東條側は論外だが、かといってヴァンやC.C.も信用できない。 そもそもこの戦闘に参加する目的もないため、彼女は戦う必要がないのだ。 しかし一番の理由は別にある。 (もう、誰かが死ぬのは嫌だよ……) 真紅が死んだ悲しみから、未だ抜け出すことができない。 そんな状態でまた誰かが死んでしまったら、もう耐えることができない。 もう彼女は、誰かが死んでいく姿を見たくない。 だから彼女の精神は、戦闘に参加することを拒絶しているのだ。 (……ここから逃げよう) 戦うのが嫌なら、逃げるしかない。 誰かが死ぬのが嫌とはいえ、自分の命だって惜しい。 この場で何もせずに流れ弾でも当たったら、死んでも死に切れないだろう。 だったらこの場から逃げればいい。 失敗する可能性もあるが、何もしないよりはマシだ。 そう思い、彼女が逃亡するための策を練り始めた時だった。 「ねえ」 C.C.と対峙する青年――――東條悟が口を開く。 「君はどうすれば英雄になれると思う?」 抑揚のない声で、唐突に問い掛けてきた。 「……それは私に聞いているのか?」 怪訝な瞳を東條に送るC.C.。 彼女の質問に対し、東條は言葉にでは表さず首を縦に振った。 「……そうだな、世界のために自らの命を犠牲にでもできたら、間違いなく英雄になれるだろうよ」 「へぇ……君は?」 「……ッ!」 C.C.の解答に満足したのか、東條の視線が今度はレナに向けられる。 彼の死んだ魚のような目に自らの顔が映り、思わず彼女は震えてしまった。 英雄になる方法。 自分なりの答えを模索するが、すぐに一つの結論に至った。 そんなものは存在しない、と。 英雄とは偉業を成し遂げた者が他者から呼ばれる名称であり、なろうと思ってなれるものではない。 故に英雄になる明確な方法など、最初から存在しないのだ。 だからレナは答えあぐねていた。 相手の気を引くために、何らかの解答を示さなければならないとは分かっている。 が、どうしても最初の結論を頭から切り離すことができないのだ。 「それか」 レナが黙りこくっているのを見かねてか、C.C.が再び口を開く。 「私をこのふざけたゲームから解放してくれたら、私はお前のことを英雄と呼んでやろう」 相手を挑発するように、ニヤリと笑みを浮かべるC.C.。 東條もその意図が読めたのか、能面のような顔を歪ませていく。 「君達は……英雄になるのに相応しくない」 「当然だろう、私は英雄になる気などないのだからな」 C.C.はあくまで相手を挑発することを止めようとしない。 しかし決して銃口から目を離さず、相手の一挙手一投足を見逃さない。 張り詰めた空気が辺りを支配し、数秒が経過する。 そこで――――東條が動いた。 「……?」 だが引き金を絞ったわけではない。 C.C.に定めていたはずの銃口を、彼女から逸らしたのだ。 彼女よりも、僅かに左側へと。 停車されたフォークリフトに荷台に座る、竜宮レナへと。 「ッ!? レナ! そこから降りろ!」 C.C.が叫び声を上げると同時に、引き金を絞る東條。 刹那、銃から弾丸が迸った。 「あぅっ……」 呻き声を上げるレナ。 彼女は地面に激突し、身体を強く打ち付けてしまったのだ。 しかしそれ以外には目立った外傷もなく、銃創も見当たらない。 C.C.の警告が功を奏し、間一髪のところでフォークリフトから飛び降りることに成功したのだ。 「このっ!」 C.C.はブリッツスタッフを横薙ぎに振るい、先端から火球を発射する。 が、狙った先に東條の姿はなく、火球はそのまま遠方に消えていった。 「……逃げられたか」 自分達に背中を向け、走り去っていく東條。 向かう先は、ヴァンとミハエルが戦っている場所。 おそらくは援護に向かうためだろう。 C.C.も彼と同じように援護に向かおうとするが、すぐに足を止めた。 彼女は戦闘を請け負うことはあるものの、基本的に得意ではない。 無闇に乱入し、人質にでもされたら最悪だろう。 見たところヴァンの方が優勢のようだし、東條も銃だけで援護するのは難しいはずだ。 故に、自分が行っても無駄だと彼女は判断した。 (私を助けてくれた……?) 一方でレナは、先ほどのC.C.の行動に疑問を抱いていた。 C.C.が自分のことを疎ましく思っていることに、レナは薄々気づいていた。 なのに何故、彼女は自分を助けてくれたのだろうか。 あそこで声を掛けてくれなければ、回避が遅れて間違いなく死んでいただろう。 レナのことを疎ましいと思っているのなら、あそこで見捨てればいいはずなのに。 (さっき言ってたみたいに……情報が欲しいのかな) ヴァンやC.C.は情報を欲しがっていたから、足手まといのレナを生かした。 そう考えれば、C.C.の行動にも納得がいく。 最も有用そうな情報は、既に話してあるのだが。 憂鬱そうな瞳で、虚空を仰ぐC.C.。 その姿を、小難しい顔で眺めるレナ。 彼女たちがそれぞれの思惑を交差させている時。 「おはよう、皆」 聞き覚えのある幼い声が、彼女たちの耳朶に触れた。 そう、六時間に一度の定時放送。 それを行う、V.V.の声だ。 「V.V.……ッ!」 C.C.の憂鬱そうな顔が、怒りの篭った顔へと変貌する。 だがV.V.は彼女のことなど意に介することもなく、淡々と放送を行っていく。 冗長すぎる挨拶に、禁止エリアの発表。 前者は彼女たちの苛立ちを助長させるだけだが、後者は有益な情報である。 が、一番知りたい情報はそれではなかった。 死亡者の発表。 彼女たちにとって、一番気がかりだったのがこれだった。 「じゃあ、次の死亡者の発表に行こうか。」 V.V.がそう言うと同時に、レナは祈りを捧げる。 仲間の名が誰一人呼ばれぬように、と。 そして時を同じくして、東條悟がヴァンとミハエルのところに辿りついた。 「織田敏憲」 東條が銃を構えながら、ミハエルの名を叫ぶ。 「亀山薫」 その声を聞き、ミハエルがヴァンから離れる。 「斎藤一」 東條の持つ銃から、銃弾が発射される。 「真紅」 自らに迫る銃弾を、ヴァンは見切って回避する。 「銭形警部」 その隙を突いて、ミハエルがヴァンに斬りかかる。 「園崎魅音」 ヴァンは紙一重で回避しようとするが、避けきれずに腕を掠める。 「高良みゆき」 鋭痛の走る腕で日本刀を振り上げ、東條に襲いかかる。 「橘あすか」 ミハエルが東條を庇うように立ち塞がり、ヴァンの斬撃を受け止める。 「柊かがみ」 日本刀と西洋刀、二つの刀が拮抗を開始する。 「緋村剣心」 ミハエルの腕が震えると同時に、仕込み杖の刀身に亀裂が走り始める。 「平賀才人」 ――――彼らはここに来るまで、百を超える打ち合いをしていた。 「北条沙都子」 その度に刀は衝撃を吸収し、傷を負っていく。 「北条悟史」 限度を越えれば、次第に朽ちていく。 「劉鳳」 耐久力が玩具同然の仕込み杖は、ここにきて限界が訪れたのだ。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 亀裂が入ってから数秒、音を立てながら仕込み杖が砕け散る。 「ルルーシュ・ランペルージ」 ヴァンの日本刀が、ミハエルの身体に一閃を加える。 そして、血飛沫が舞った。 「ルルー……シュ?」 口をぽかんと開けながら、空を眺めるC.C.。 今の放送の内容は、この会場で死んだ人間の名を伝えるもの。 その放送で、ルルーシュ・ランペルージの名が呼ばれた。 つまり、それの意味するものはルルーシュの死。 彼女の共犯者にして絶対服従のギアスを持つルルーシュが死んだというのだ。 「そんな……」 真紅、園崎魅音、北条沙都子、北条悟史。 レナの仲間の名は、合計で四人呼ばれた。 そして直後に見たものは、一人の少年が血飛沫を上げながら倒れる光景。 あまりに凄惨なその光景は、死という概念を忌避してきたレナの正気を奪うには十分過ぎた。 「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 悲鳴を上げると同時に、レナは走り出す。 この狂った殺し合いから逃げ出すため、ただひたすらに走り抜ける。 戦場の中心で、大きな悲鳴を上げながら。 そんな目立つ行為をした彼女を、敵方が見逃すわけもない。 ぱらら、とタイプライターが点火するような音と共に、東條の銃から大量の銃弾が放射される。 気が付くと彼女は、大量の銃弾の元に晒されていた。 「あ……」 彼女が横を向くと、そこには大量の銃弾がある。 C.C.はルルーシュの死に動揺していたため、援護は間に合わない。 途方もない恐怖がレナを支配した時には、既に銃弾は彼女の身体を貫いていた。 「おおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」 はずだった。 「これ以上、カギ爪の野郎の好きにはやらせはしねぇ!」 銃弾が彼女の身体を貫く直前、彼女と銃弾の間に割り込むヴァン。 刀を回転させ円状の盾のように扱い、飛来する銃弾を叩き落す。 幾度も刀と銃弾の衝突音が響き、十数秒が経過。 大量の銃弾が叩き落とされ、地面に転がっていた。 「ヴァン……さん?」 「大丈夫か? えーと……」 安心して力が抜けたのか、へなへなとその場に座り込むレナ。 彼女の身体に銃創は一つもなく、ヴァンもその姿を見てほっと胸を撫で下ろした。 「ぐっ……」 「ヴァンさん!?」 ヴァンがくぐもった声を出すと同時に、握っていた刀を落としてしまう。 その音でレナが顔を上げると、右肩を抑えるヴァンがいる。 鮮血の吹き出る肩を、苦しげに抑えるヴァンが。 「まさか……!?」 レナの顔面が、見る見るうちに青白く染まっていく。 東條が彼女に照準を定めているのを見て、彼は急いで救援に駆けつけた。 しかし彼とて万能ではなく、速さと丁寧さを両立させることはできない。 つまり駆け付けることには成功したものの、全ての銃弾を叩き落すことはできなかったのだ。 叩き落とせなかった銃弾は、そのまま彼の身体を通過する。 腹部に二発、右肩に一発。 彼は被弾していた。 「…………」 無言の東條によって、再び構えられる銃。 照準は負傷しているヴァン、刀を落としてしまったため防御する術はない。 いくら頑丈な彼でも、無数の銃弾を浴びれば死は免れないだろう。 レナが顔を覆い、ヴァンが東條を睨みつけた時だった。 「ヴァン! レナ!」 フォークリフトを走らせながら、C.C.がやってきたのは。 轟々と音を立て、最高速度を出しながら進むフォークリフト。 タイヤが転がる小石を跳ね除け、緑の装甲がそれを砕く。 その進行方向にいるのは、銃を構える東條悟。 「ッ!?」 フォークリフトの猛進を、東條は寸前のところで回避する。 だが不完全な姿勢のまま避けたため、地面に転倒してしまう。 「今のうちに逃げるぞ、早くしろ!」 フォークリフトを降り、ヴァンとレナに逃亡を促すC.C.。 彼女の背後を見ると、また立ち上がろうする東條の姿がある。 それを見て、ヴァンは苦虫を噛み潰したような顔をした。 この会場において、カギ爪の男に繋がる唯一の手掛かりはミハエルだ。 しかし今のヴァンは右肩を負傷し、著しく戦力が低下している。 先ほどの追撃は辛うじて逃れられたが、次も逃れられる保障はない。 東條が所持するレイ・ラングレンの銃の恐ろしさは、彼が一番良く理解している。 この場の支配権を持っているのは、間違いなく東條だ。 「チィッ……すぐにまたぶっ倒してやる!」 ここに残るのは危険と判断し、結局ヴァンは逃走を選択する。 追随するようにレナも彼の背中を追いかけ、C.C.はブリッツスタッフを振るう。 「さらばだ、もう会うこともないだろうな」 ブリッツスタッフの先端から発射された火球は、フォークリフトのエンジン部分に命中。 数秒後、炎はガソリンへと点火し―――― 爆発を起こした。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 「はぁ……はぁ……ここまで来ればあいつらも追ってこないか」 肩で息をしながら、C.C.は背後を見る。 彼女から数百メートル先の地点では、爆炎と黒煙が立ち昇っていた。 「……あいつら生きてるだろうな? 俺はあいつらにカギ爪の野郎のことを……」 「心配ない。銃の男の方は分からないが、少なくともあの甘ちゃん坊やは生きてるだろうよ」 「そうか、ならいい」 ヴァンも右肩を抑えながら、爆心地を眺める。 少し前に西や北の方角で発生した爆発よりは小規模だが、それでも爆発には変わりない。 爆心地から離れていたミハエルはともかく、東條の方は一溜まりもないだろう。 だがヴァンとしては、ミハエルさえ生き残っていればそれで良かった。 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…………」 それよりも今の彼にとって、一番の問題はレナの方だった。 先ほどから彼女はずっとこの調子なのだ。 目尻に涙を溜めながら、延々と謝罪の言葉を述べ続ける。 自分の代わりに負傷したヴァンへの罪悪感があるからこそ、彼女はずっとこうしているのだろう。 だが基本的に女性が苦手な彼としては、彼女の行動は堪ったものではなかった。 「あの……自分は本当に大丈夫ですから……」 ヴァンは渋い顔をしながらレナを宥めるが、それでも謝罪を止めない。 虚ろな表情で俯き、まるで彼の声が聞こえていない様子。 壊れた目覚まし時計のように、ずっとごめんなさいと繰り返していた。 「だあぁぁっ! もういい加減やめろって! 本当に俺は大丈夫だから!」 ついに痺れを切らし、大声を上げるヴァン。 彼の大声にレナは肩を震わし、涙で汚れた顔を上げる。 「でも……ヴァンさんは銃で撃たれて……」 「はぁ……えーと……なんて言ったっけ、お前?」 「レナだ、いい加減覚えろ、これで二度目だ」 何時までも人の名前を覚えられないヴァンに、C.C.が呆れながら補足を入れる。 「そうそう、確かに俺は銃で撃たれた、でも死ぬほどの傷じゃない、それに……」 そう言うと、ヴァンは黒いタキシードの脱ぎ始める。 突然脱ぎ出した理由が分からず、混乱するレナ。 そんな彼女を尻目に、彼は黙々とタキシードを脱いでいく。 しばらくして彼がタキシードを脱ぎ終えると、そこに現れるのは鍛え抜かれた肉体。 そしてその肉体には、鋼色の布のような物が巻き付けられていた。 「俺はこの刀を腹に巻いてたんだ、だからほとんど痛くはない」 彼が腹部に巻き付けていたのは、新井赤空の作った殺人奇剣の一つ、薄刃乃太刀。 刃の強度を保ったまま可能な限り薄く鍛え、布のように拵えた代物だ。 彼はこれを腹部に巻き付けることによって、防弾チョッキ代わりに利用したのだ。 ファサリナの三節棍での不意打ちが完全に決まらなかったのも、これが原因である。 偶然にもこの刀は、彼が愛用する蛮刀と機能が似ていた。 しかしこの刀は彼の蛮刀とは違い、本物の布のようにまでは変化してくれなかった。 数メートルにも及ぶ長さの奇剣を持ち歩く方法を彼は悩み、そこで思い付いたのが腹部に巻き付けておくことだった。 奇しくもそれは、この刀の本来の使い手である沢下条張がとった方法と同じである。 彼も剣心との戦闘でこの刀を防具代わりに使用し、致命傷を防いでいた。 「でも肩の方は……」 「レナ、ヴァンがいいと言っているのだ。謝罪の言葉もあまりしつこいと鬱陶しいだけだぞ」 未だ食い下がろうとしないレナを、溜息をつきながら宥めるC.C.。 レナは不安そうにC.C.の顔を眺めるが、彼女の視線が痛々しいほど突き刺さる。 それからしばらく二人は視線を交わしていたが、やがて観念したようにレナが項垂れた。 「…………」 三人の間で会話が止み、居心地の悪い空気が漂い始める。 彼らは元々友好的な関係でもなかったため、それも仕方のない話なのかもしれない。 (魅ぃちゃん……沙都子ちゃん……悟史くん……真紅ちゃん……) そんな中でレナは、放送で呼ばれた四人のことを思い出していた。 ゲームが始まってからたったの六時間で、四人もの仲間が死んでしまった。 魅音は唯一無二の親友であり、いつも一緒に行動していた仲だ。 沙都子は妹のような存在であり、彼女のトラップにはいつも手を焼かされた。 悟史とは長い間会っていなかったが、だからこそ会いたいと強く思っていた。 真紅の死は知っていたが、放送によって改めて認識させられた。 四人とも素晴らしい仲間であったが、もう二度と会うことはできないのだ。 そう思うと胸が張り裂け、どうしようもないほどの悲しみに襲われてしまう。 「うっ……ぐずっ……」 目尻に溜まった涙を、手で拭き取る。 真紅のローザミスティカは、いつの間にか無くなっていた。 おそらく逃げる際に、落としてしまったのだろう。 大事な真紅の形見を失った悲しみで、また涙が流れる。 だがいくら拭き取っても、涙が乾くことはない。 目の奥から、洪水のように溢れてきていた。 「お前も……誰かを失ったのか」 そんな時、C.C.が彼女の元へと歩いてくる。 ゆっくりとした歩調で、悲しげな表情を浮かべながら。 「ひょっとして……C.C.さんも……」 「ああ、大事な共犯者を失ってしまったよ」 空を仰ぎ、独白のように語るC.C.。 その表情はどこまでも悲しげで、そして寂しげだ。 「死による別離など、なんともないと思っていたのだがな」 彼女は悠久とも呼べる時の中で、何度も死別を体験していた。 その度に彼女の心は擦り切れ、摩耗していった。 そのうち人の死にも慣れ、彼女自身も死という概念に対してドライになっていた。 そう、自らに言い聞かせていた。 本当は誰かが死んでいくことが、とてつもなく悲しかった。 もう死別を経験したくないからこそ、彼女は自らの死を望んでいたのだ。 「ヴァンさん、C.C.さん」 瞼に涙を浮かべたまま、レナは二人の名を呼ぶ。 「なんであの時に、二人とも私を助けてくれたんですか?」 ずっと不思議でならなかった。 二人が自分の存在は明らかに足手まといであり、場の雰囲気も悪くしていた。 あそこで殺されていれば、二人にとっても都合が良かっただろう。 なのに何故、二人はレナを助けてくれたのだろうか。 「俺はその……これ以上カギ爪の野郎に好き勝手されるのが嫌だったから」 ヴァンが頭を掻きながら、照れ臭そうに答える。 「どうしてだろうな、私にもよく分からないんだ」 C.C.は答えると同時に、皮肉げに笑む。 それは今までレナに見せたことのない顔であった。 (ああ、そっか) 今の今まで二人のことを、冷淡な人間だと思っていた。 だけど違う、二人はただ不器用なだけなのだ。 決して彼らは、人の死に関して冷淡な人間ではない。 むしろ死に関わる機会が多いからこそ、命の価値を痛いほどに理解しているのだ。 「ごめんなさい、私……あの時、二人のことを悪く言って……」 「気にするな、大事な者が死んだ直後は誰でも冷静ではいられないんだ」 そう言って、C.C.は今度は自嘲するように笑みを浮かべる。 「なぁ、えーと……俺はそういうことはしなかったけど……」 ヴァンが帽子で目線を隠しながら、言葉を紡ぎ始める。 「本当に悲しい時は……思いっきり泣いてもいいと思うんだ」 (みんな……みんな……) ヴァンの言葉で、レナの心に閊えていた何かが解け始める。 それからゆっくりと、胸の奥から沸き上がってくるように。 「あ……あ……」 一滴、一滴と―――― 「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」 ――――彼女の瞳から大粒の涙が零れ始めた。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 大声を上げながら、慟哭するレナ。 仲間の死をひたすらに悲しみ、ただ泣き続ける。 (…………) そんな風に一途に泣き続ける姿は、C.C.にとってどこか羨ましかった。 悠久の時の中で幾度も死を経験するうちに、彼女の涙は枯れ果てていた。 死別に逢遇したくないがために、無意識に他者との接触を避けていた。 そうして幾年の時が過ぎ、久々に巡り会ったのがルルーシュだった。 それは魔女の気まぐれか。 彼女はレナの離脱を確定事項だと思っていたし、早く別れたいと思っていた。 だが、今は何故かそんな気が起こらない。 仲間の死に悲しむレナに、深い共感を覚えていた。 "大事な者が死んだ直後は誰でも冷静ではいられないんだ" 先ほどレナに投げ掛けた言葉。 それがそのまま自分にも当て嵌ることに気付き、C.C.は自嘲する。 (なぁ、ルルーシュ?) もうこの世にはいない共犯者に向けて、C.C.は語りかける。 (私も……泣いていいのだろうか……) そう、天に問うC.C.。 彼女の頬には、一筋の涙が伝っていた。 【一日目 朝/G-1 道】 【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】 [装備]:無し [所持品]:支給品一式、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、サタンサーベル@仮面ライダーBLACK 空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、真紅の下半身@ローゼンメイデン [状態]:疲労(小)、悲しみ [思考・行動] 1:泣く。 2:圭一、詩音と合流する。 3:翠星石と蒼星石も探す。 4:ミハエル、東條、水銀燈、後藤を警戒。 [備考] ※この会場の西端と東端、北端と南端は繋がっています。 どこかの端からエリア外に出ると、逆の端の対応する位置へとワープします。 【ヴァン@ガン×ソード】 [装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- [所持品]:支給品一式、調味料一式@ガン×ソード [状態]:疲労(小)、右肩に銃創、右上腕部に刀傷 [思考・行動] 0:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。 1:体勢を整え、ミハエルをぶっ倒しに行く。 2:レイが気にならない事もない。 [備考] ※23話「みんなのうた」のミハエル戦終了後より参戦。 ※ヴァンはまだC.C.、竜宮レナの名前を覚えていません。 【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ R2】 [装備]:ブリッツスタッフ(二回使用)@ヴィオラートのアトリエ [所持品]:支給品一式、エアドロップ×3@ヴィオラートのアトリエ、ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2 [状態]:疲労(小) [思考・行動] 1:今後どうするかを考える。 2:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない。 3:後でピザを食べる……つもりだったが、今はそんな気分ではない。 4:後藤は警戒する。 [備考] ※TURN11「想いの力」終了後、日本に戻る前から参戦。 ※不死でなくなっていることに気付いていません。 ※真紅のローザミスティカは、F-1の辺りを浮遊しています。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 時系列順で読む Back 真実を惑わせる鏡なんて割ればいい Next ガラスの友情 投下順で読む Back 真実を惑わせる鏡なんて割ればいい Next ガラスの友情 077 命の価値 ヴァン [[]] C.C. [[]] 竜宮レナ [[]] ミハエル・ギャレット 084 ガラスの友情 東條悟
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adamant faith ◆.WX8NmkbZ6 「そのサングラス、クーガーさんの支給品ですか?」 「いいえ、斎藤さんと交換しました。 もしかして魅音さんのお友達の方の物でしたか? まさかこの男物のサングラスが魅音さんの物だとは考えにくい。 しかし女性が男物のアクセサリーを着用してはいけないという決まりは無く、それに魅音さんのような可憐な女性が敢えてこういったアイテムを用いるというのもそれはそれで新たな流行を生み出す為の文化的な」 「いえ、知り合いのと似てただけです」 総合病院一階の廊下を進みながら園崎詩音はストレイト・クーガーと会話していた。 後藤との戦闘後に合流した時点で、詩音はクーガーがある程度信用に足る人物だと判断している。 故にクーガーの応急処置の為、ほんの数分前にこの病院を訪れたのだ。 クーガーの傷は浅くはなかったが既に血が止まっており、一刻を争うものでもなかった。 その為まず始めたのは人がいない事の確認と医療道具の捜索だ。 手当てをするには必然的に無防備な姿を晒す事になる。 危険人物が潜んでいないか、このフロアだけでも極力確かめておいた方がいい。 そして不親切な主催者は消毒薬の一つも支給してはくれなかったので、その代わりが必要だった。 病院内ならば何かしら見付かるだろうと期待を込めて、詩音とクーガーは部屋を順に回る。 「あと、私は詩音ですから」 「あーらら、これは失礼!」 名前に関するやり取りは何度目かになるので、恐らくわざとだろうと詩音は推測した。 『魅音』と『詩音』――面白半分に間違われるのは詩音にとって不愉快な事だ。 だがこの男がただふざけて誤用している訳ではない事にも気付いている。 後藤への恐怖、仲間達の捜索の遅れに対する焦りが少し薄れたのだ。 名前を間違えておどけて見せているのは相手を気遣ってのものなのだろう。 そう割り切って詩音は名前の間違いに関して厳しくは追及しない事にした。 それにクーガーが身に付けた――見慣れた葛西のサングラスが詩音の心を僅かに軽くしている。 初対面の相手に気を許す程詩音はお人好しではないが、安心感を覚えている事も事実だった。 だからこそ仲間達との合流を急ぎながらも、こうして悠長に情報交換をしていられたのだろう。 そして実際に目にしたという事も大きかったが、アルターという特殊能力の存在も受け入れられた。 「一階の部屋はこれで全部ですけど、誰もいないみたいですねぇ。 収穫は一応ありましたが」 僅かに見付けられた薬は全て詩音がデイパックに回収している。 そしてこの部屋でも詩音はショーケース内に薬瓶を発見し、それに手を伸ばそうとしていた。 「そのようですね。 ……ところで魅音さん」 突然クーガーは話題を変え、詩音がそれに答えるより早く言葉の続きを口にした。 「そろそろ時間です」 ちくり。 詩音が「何のですか」と尋ねる前に、胸に棘が刺さるような痛みを覚える。 何か良くない話を聞く直前に必ずあった感覚。 三年目のオヤシロ様の祟りについて聞かされる前にも感じた虫の知らせ。 思わず詩音はケースに伸ばしていた手を止める。 放送の時間。 クーガーも詩音も他の参加者達と等しく、ただ黙ってそれを聞いている事しか出来なかった。 「魅――……詩音さん」 「……嘘だ」 斎藤一、柊かがみ、平賀才人。 いずれもクーガーが直接死亡を確認した人物であり、その全ての名が放送で呼ばれた。 つまり放送は偽り無い真実。 それなら、園崎魅音は。北条沙都子は。北条悟史は。 「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だあああぁあぁああぁぁあああああ!!!!!!」 クーガーが何か言っている。 ――うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい黙れ黙れ私に話し掛けるな!!! ショーケースに拳を叩き付ける。 砕けたガラスが指や甲を傷付けたが痛みは無い。 あの兄妹は今までもっと痛い思いをして来たのだから。 魅音もこの痛み以上の責任を背負っていたのだから。 それでクーガーは黙ってくれたが、かといって詩音の心が収まるはずも無い。 「悟史くんはもう、むぅって、……言ってくれない……? 頭を撫でてくれないの……? 沙都子はもう、私をねーねーって呼んでくれないの……? お姉は……? これから幸せになれるはずだったのに、何で……どうして……?」 北条兄妹は幼い頃から平穏な家庭と無縁の生活を送っていた。 その為に悟史は涙の流し方も怒り方も知らずに育ち、沙都子は心に深い傷を負う。 悟史が叔母を殺した事で訪れるはずだった平穏も、悟史の失踪という形に終わった。 しかし沙都子は今では詩音にとっては家族同然の存在で、二人で悟史の帰りを待っている。 詩音と魅音の双子の姉妹もまた、園崎家という大人の事情によって苦しんでいた。 詩音は魅音だし魅音は詩音なのに、と。 幼い姉妹には何故大人達が『魅音』と『詩音』を分けたがるのか分からなかったのだ。 それでも『詩音』に鬼が刻まれて『魅音』になった日からは嫌でも違いを意識するようになる。 姉を奪ってしまった魅音と、頭首の運命を押し付けてしまった詩音。 二人は互いに非を感じ、贖罪の機会を探している。 時にすれ違い、かの世界のように詩音が魅音を殺めた事もあった。 それでも今は、姉妹で同じように思っている。 ――私たち、また次の時も双子がいいね。 「私も沙都子も悟史くんも魅音も、これから幸せになるはずだったのに!! 後は皆で悟史くんが帰って来るのを待っていれば良かった!!! それで皆幸せになれるはずだったのにッ!!!!」 悟史が行方をくらませた後、それぞれに後悔と困難があった。 魅音は真実を確かめる為に園崎お魎に一人で立ち向かったが、それは並大抵の覚悟では出来ない。 詩音と沙都子も今でこそ家族同然の関係でも、それは本来あり得ない構図だ。 沙都子の母が離婚と再婚を繰り返した結果、沙都子は兄以外の家族に心を開かなくなった。 そして詩音にとって沙都子は、思い人の悟史を追い詰めた張本人に他ならない。 二人の仲が良いというだけで奇跡。 その上で北条鉄平の帰宅というどうしようもない運命を打ち破れた事も奇跡。 多くの奇跡が重なってようやく掴んだ未来には、全員の幸福が約束されているはずだったのだ。 「私達はどうして幸せになれないの!!? 誰のせい?! 誰が悟史くん達を殺したの!!!?」 そして思い至る――環境が悪いのだと。 『オヤシロ様の祟り』がまかり通った原因は雛見沢という地域そのものにあった。 それと同様に、人が人を殺す事が許されるこの空間が三人を殺したに違いない。 殺し合いという場そのものが仇なのだ。 「悟史くんと沙都子と魅音を不幸にしたヤツをぶっ殺してやるッ!!! こんな事を始めたV.V.ってガキも!! 私達を助けてくれなかった連中も!! 殺し合いに関わってる奴も関わってない奴もみんなみんなみんな!!! 今すぐ殺してやる、15000秒で殺してやる!!! この会場にいるヤツ全員ぶっ殺してやるぅうううううう!!!!」 病室の出口に向かって走り出す。 ――落ち着け落ち着け、クールになれ詩音! 銃があるのだから人を殺すには充分だ、弾が足りなくなれば殺した参加者から奪えばいい。 落ち着いてやればきっと殺れる!! しかし数歩も行かないうちにクーガーに手首を掴まれ、詩音は急停止させられた。 「どこに行くんです? それに女性がそんな言葉を使うものじゃありませんよ」 「急いでるんです、離して下さい」 「いけません、詩――」 「離せって、言ってんだよッ!!!!!」 クーガーにしてみれば、今の詩音の態度は豹変したようにしか見えなかっただろう。 普段の口調こそ淑やかだが、詩音は部活メンバーと比較しても最も激情し易い。 一度走り出したら他人にそれを阻まれようと止まりはしないのだ。 例え人を傷付けてでも、――殺してでも。 ▽ 私の前に立ちはだかるのか、悟史くん達を殺した連中を庇うのか!! お前は正義感があろうが綺麗事を並べようが悟史くん達を守れなかった、同罪だ!!! しかもお前が私と会う前に悟史くん達を殺していない保証だってどこにもないじゃないか!!! 圭一やレナだってそうだ、きっと真剣に合流しようと思わなかったんだ。 「あいつらなら大丈夫だろ」なんて無責任な考えで、三人を見殺しにしたに違いない。 そう言えば、名簿に梨花ちゃまの名前が無かったのは何故? 部活メンバーに加えて私や悟史くんまで参加させられてるっていうのに! 思い返せばあの主催者のガキに似てるじゃないか、ガキのくせにあの人を食ったような態度!! そうだ、梨花はあのガキとグルに違いない!!! 違いない、違いないッ!! どいつもこいつも、殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!!! 邪魔するってんならまずお前から、頭を叩き割って中身を抉り出してやるよぉおおおお!!!!! ▽ 詩音が自由な方の手で割れたショーケースの中の薬瓶を掴み取り、蓋を開ける。 そのまま投げればクーガーの運動能力でも、瓶本体はともかく飛び散る液体全ては避けられない。 今のクーガーは万全の状態ではないからだ。 「急ぐ理由も出来た」と言いながら、この病院までの道中の移動手段は徒歩。 速さが信条で、詩音と初めて接触した際にはアルターを使って竜巻のように現れた男がだ。 詩音の歩調に合わせたとも考えられるがクーガーなら詩音を担いで移動する事も出来たはず。 つまり少なくともアルターの使用を控える程度にはクーガーは弱っている。 例え全て避けられたとしても、詩音の手を握ったままでは不可能。 クーガーが手を離すか薬品を被るか――どちらでもいい、必要なのは時間稼ぎだ。 負傷しているという事は、無敵ではない事の証明に他ならない。 稼いだ時間でデイパックから銃を取り出し、構え、撃つ。それで殺せる。 例え片手で撃つ事になったとしてもこの距離なら外さない。 ラベルは読んでいないが、硫酸や硝酸のような劇薬である事を望みながら腕を振り上げた。 「それは感心出来ませんねぇ」 だがどれだけ思索しようと、投げる前にその手首を掴まれてしまえば意味は無い。 「離し、」 「離します。ですがまずは俺の話を聞いて下さい」 ――嫌だ嫌だ嫌だ聞きたくない聞きたくない。 復讐何も生まないだとか殺人は禁忌だとか、お決まりのお説教を始めるに違いなかった。 束縛を嫌う詩音にとってそれは拷問に等しい。 しかし両手の自由を奪われ面と面を向き合わせている以上は聞くしか無い。 「いいですか詩音さん、俺はこう考えているんです。世の中では確認も重要であると。 確かにこの世の理は速さにありこの世でもっとも重要な事柄は速さであると言え、その点あなたの決断判断行動の速さは賞賛に値します。 しかしその速さには同時に正確さを求められるのです。最高最速最適最善最優先のスタートを切ったとしても目的地やルートを正確に把握していなくては最速の到着は出来ません、前以て正しい情報収集と判断をして初めて最速の目標達成が」 「何が言いたいんですか!!」 クーガーの長い早口を最初から最後まで聞いて解釈するだけの余裕は今の詩音に無い。 詩音が口上を遮って結論を急がせると、クーガーは喋る速度を緩めて諭すように答える。 「放送が全て真実と決まった訳ではない、という事です」 「…………え?」 耳を疑った。 クーガーが口から出任せを言っているのではないかと警戒しながら、しかし続きに耳を傾ける。 「放って置いても疑心が生まれる状況です、真実の中に僅かな嘘を混ぜるだけで更に深まるでしょう。 丁度先程のあなたのように、です」 「……でもそんなの、ただの推測ですよ」 「確かにただの推測です。 しかし考慮してみる価値はあるんじゃありませんか? 詩音さんにとって一番近しい三人の名が揃って呼ばれたというのも不自然でしょう」 的外れな話は――していなかった。 あの放送は考え方によっては、まるで詩音個人に対する嫌がらせのようにさえ見えてくるのだ。 「私の同僚二人の名前も呼ばれましたが、どちらもそう簡単に殺されるような男ではない。 少なくとも私はあの放送を信じませんよ」 「それだって……何の根拠もありません」 「それならあの放送の根拠はどこにあるんですか。 主催者が『嘘が嫌い』と言ったから? それがゲームのルールだから? あなたはそんなもので諦められるんですか?」 そんなはずが無い。 諦めなかったから沙都子を助け出す事が出来て、二人で悟史を待てた。 信じなかった事を悔い、信じた。 それが出来なかったから、かつて悲劇が起きたのだ。 それに詩音が殺人に手を染めた事を知れば三人は悲しむだろう。 三人ともどうしようもなく甘ちゃんで、……優しいから。 「今後も他の参加者に会っていけば、三人の事を知っている人に会えるかも知れません。 あなたの他のお友達も探さねばなりませんしね。 強硬手段に出なくとも、あなたにやれる事はまだまだあるはずです」 「……どうしてそこまで考えてくれるんです?」 まだ信用出来ない。 懐柔して利用しようとしている? それともやはり相手をなだめる為の出任せ? 詩音はクーガーの出方を窺う、もし躊躇があるようなら―― 「俺がスロウリィだった為にかがみさんは助けられませんでした。 でも目の前にいるあなたならまだ助けられる。 ここを飛び出そうとした時、一人で後藤に立ち向かうところまで想定していましたか? その瓶のラベルは読みましたか?」 クーガーは間髪入れず、澱み無く答える。 詩音は会場内に徘徊するモンスターの存在を完全に忘れていた。 そして握ったままでいた薬瓶のラベルを見れば、当然硫酸でも硝酸でも無く――ただの消毒薬。 一介の学生に過ぎない詩音では、真正面からクーガーを倒す事は初めから無理だったのだ。 だがそれは冷静に考えていれば分かった事で、詩音は大人しく非を認めて謝罪する事にする。 「……確かに短絡的でした。 先程助けて下さったクーガーさんに当たるのもお門違いだったと思います。 すみません」 「いえいえ。 俺も素晴らしく感動するほど目の保養をさせて戴きましたぁー……」 クーガーの言葉を測りかねたが、すぐに思い当たった。 腕を振り上げれば、胸元がはだける。 制服を貸してきた時は目を背けていたくせに何て事を、とクーガーの足を蹴り飛ばしかけた。 しかしこれも一応気遣いのつもりなのだろうと強引に納得し、詩音は矛を収める。 「応急処置するんでしたよね。 私も止血しないといけませんから、そのついでで良ければ手伝います」 「それは助かります。 詩音さん、俺はこう思っているんです……治療をして貰うなら女性がいいと! 確かに治療を行うのは医師のような技術と知識を持った人物が一番です、しかしその人物が医師かそうでないかという以前に男性か女性かという問題があるのです。 例え腕に覚えがあったとしても男性では怪我は治りますがただそれだけ、それが女性であった場合は肉体的にも精神的にも回復が望めるんです!! つまり技術と知識を持った女性の医師が一番良いという事になりますが女性であるというだけでそれらが足りなくてもカバー出来ると俺的には確信していて」 「そんなに喋る元気があるんなら、手当ては要らないですね」 「はっは、これは手厳しぃー」 クーガーは言葉とは裏腹に、劉鳳と橘あすかの死を感じていた。 普段なら二人――特に劉鳳には「殺して死ぬような奴じゃない」と思っていたはずだ。 しかしクーガーは既に後藤というモンスターに遭遇している。 この会場内にもし後藤のような参加者が複数いるとしたら、例え劉鳳程の実力者でも危うい。 そして二人なら弱者と出会った時、見捨てる事は出来ないだろう。 本当に二人が死んだのならきっと誰かを守って――自分の意地を貫いて死んだに違いない。 その姿が目に浮かぶようだった。 泉こなたをまだ正気に戻せていない。 高良みゆきは恐らく、間に合わなかった。 柊つかさと岩崎みなみの保護もせねばならない。 こうしているうちに後藤による更なる被害者が出ている可能性もある。 劉鳳やあすかと同じHOLY隊員である事に恥じぬ生き方――最速の生き方を。 詩音が見た通りクーガーは弱っており、残された時間はそう長くはないかも知れない。 だからこそ、ひた向きな自分が決めた澱み無く真っ直ぐな道を、最速で掛け抜ける。 クーガーは今の己のスロウリィさを噛み締めながら、戦いを止める決意をより強固にした。 ▽ クーガーさんは私の味方だ。 でももし私に嘘を吐いたら――どうなっても仕方ないよね? 圭ちゃん達は言っていた、殺人は最低の選択肢だと。 確かに私も今となっては、沙都子を助ける為に伯父を殺すという考えは最低だったと思う。 それで助け出された沙都子は多分、悲しんだだろうから。 今踏み留まっているのもそう、きっと三人が悲しむからだ。 でももし万が一三人が死んでしまっていたら、三人とも悲しまない。 だって死んでるんだもの。 そしたら圭ちゃん達の論は通らなくなる。 三人を生き返らせる為に人を殺すのも仕方ない。 あの放送が本当なら、願いを叶えるという約束も本当に違いないんだから。 後は私の殺しが三人にバレないように隠蔽すれば完璧、誰も悲しまない。 それで皆が幸せになれるんだったら、私がちょっと手を汚すぐらい安いよね? 三人に会えたら、ぎゅーっと抱き締めよう。 それで私が悟史くんにくまのぬいぐるみを渡して、悟史くんがそれを沙都子に渡して。 悟史くんは私を褒めてくれるかな、そしたら悟史くんは頭を撫でてくれるかな。 沙都子はかぼちゃを食べてくれるようになるかな、そしたら悟史くんは頭を撫でてくれるかな。 魅音も悟史くんと会えたら絶対喜ぶ、そしたら悟史くんも嬉しくなって頭を撫でてくれるかな。 それって何て素敵な世界なんだろう。 きゅんきゅん☆ その為なら、私の邪魔ヲする奴ハ、ドウナッテモ仕方ナイヨネ? ▽ 「放送に嘘が混じっているかも知れない」という可能性は半々か、それ以下か。 詩音を落ち着かせる為のクーガーの方便としての色も強く、この均衡はいつ崩れるか分からない。 それはクーガーも重々理解していた。 「しかしまぁ今のところはお互いこれで良しとしておきましょうか、沙音さん」 「……詩音です」 【一日目朝/G-8 総合病院】 【ストレイト・クーガー@スクライド】 [装備]:葛西のサングラス@ひぐらしのなく頃に [所持品]:基本支給品一式、不明支給品(確認済み)0~1 [状態]:身体中に鈍い痛み、腹部に裂傷、疲労(大) [思考・行動] 1:傷を塞ぐ。 2:かがみと詩音の知り合い(つかさ、みなみ、圭一、レナ)を探す。 3:こなたを正気に戻す。 4:詩音が暴走した場合、最速で阻止する。 [備考] ※総合病院の霊安室にかがみの遺体とデイパック(基本支給品一式、陵桜学園の制服、かがみの下着) が安置されています。 【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】 [装備]AK-47(カラシニコフ銃)@現実、HOLY隊員制服(クーガーの物)@スクライド [支給品]支給品一式、AK-47のマガジン×9@現実、SEAL(封印)@仮面ライダー龍騎、 クマのぬいぐるみ@ひぐらしのなく頃に 、消毒薬×1 [状態]手に軽い裂傷、疲労(小)、殺意と焦り、雛見沢症候群L3 [思考・行動] 1:クーガーの応急処置を手伝う。 2:悟史、沙都子、魅音、及び他の参加者を探して放送の真偽を確かめる。 3:仲間(圭一、レナ)と合流する。 4:放送が真実だった場合、会場中の人間を殺す。きゅんきゅん☆ [備考] ※皆殺し編、沙都子救出後の綿流し祭の最中からの参戦です。 ※アルター能力について知りました。 ※総合病院内で薬品を調達しました。内容は後続の書き手の方にお任せします。 ※雛見沢症候群を発症しました。 時系列順で読む Back 次元大介の憂鬱 Next 上田次郎は二人の狂人を前に気絶する 投下順で読む Back 次元大介の憂鬱 Next 上田次郎は二人の狂人を前に気絶する 072 Ultimate thing(後編) 園崎詩音 [[]] ストレイト・クーガー [[]]
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命の価値 ◆y6S7Lth9N6 フォークリフトの運転席で、黒いタキシードにテンガロンハットという珍妙な格好の男はボーッとしながら道なりに進んだ。 夜明けが近づいてきたとはいえ、周囲はまだ暗い。ライトも点けず、スピードも出せずトロトロと進んでいた。 そう運転しているヴァンに、後部座席から女性の声が響く。 「遅すぎる。もっとスピードを出せ」 へいへい、とヴァンは適当に応えてアクセルを踏んだ。 僅かにフォークリフトが加速するが、お姫様の期待には答えられなかったらしい。 白い奇妙な形のドレスを纏い、偉そうにふんぞり返った女性だ。 名前はC.C.と言うのだが、残念なことにヴァンは彼女の名前を覚えていない。 この男、ある理由から女性の名前を覚えにくくなっているのだ。 「地図によれば別れ道だ。そうだな……東に曲がるか」 「なにか用があるのか?」 「いや。特にないが……このまま進んでも森しかないからな。ルルーシュがいつまでも森にいるとは思えない」 C.C.が結論をつける。ヴァンにはどこかへ向かいたい、という欲求は今のところないために素直に従った。 カギ爪の男がいると言うなら別だが、あの男の姿はない。 ミハエルから搾り出せばつかめるかどうかすらも怪しい。 ヴァンがとりあえず運転を続けることを決めたとき、それは聞こえた。 「う……あ……あぁ……」 女の泣き声だ。ヴァンが気づかないはずがない、とC.C.はあたりをつけて見回す。 フォークリフトが道なりに進み、前方数百メートル先にセーラー服に身を包んだ少女がうずくまっているのをC.C.は発見した。 暗闇で街灯もないのに、よく気づいたと思う。このまま進めば遭遇するのだろう。 C.C.はヴァンが車を進めて少女のところで止めるのだろう、と考えた。 泣いている、というのは厄介だが情報は得れる。周囲に危険人物がいるか探った。 邪魔なら捨てておけばいい。そう考えているC.C.の前で、 「おい、ヴァン!」 「あ?」 ヴァンの運転するフォークリフトは少女をスルーして右へ曲がった。 「お前はなにを考えている」 「右に曲がれ、っていっただろう」 「バカ、状況を考えろ」 C.C.が冷たい視線をヴァンに向ける。ヴァンはムスッ、としながらも止めたフォークリフトから離れ、先をいくC.C.の後を追った。 C.C.が近づくと、ミディアムボブの髪型の少女が顔をあげる。 丸い大きな瞳に涙を溜めた、幼い印象の少女だ。 十代半ばの少女に相応の発育の身体はセーラー服に包まれている。 C.C.を綺麗だと評するなら、彼女は可愛いと評されるのだろう。 C.C.は彼女に近づく。泣いているのは厄介だが、情報は欲しいのだ。相手をしないわけにはいかない。 「ぅ……ぅ……あ、あなたは……?」 「警戒するな。ここでなにがあったか、教えて欲しい。私はC.C.だ。そこにいる男はヴァン」 C.C.が説明すると、ヴァンは「どうも」とだけ言って頭を下げた。 少女の瞳には僅かな警戒が浮かんでいるが、それも仕方がない。 彼女は「私は竜宮レナです」とだけ小さくつぶやいた。 「それでは、レナ。私たちはライトを点けなくてもお前を見つけれた。こんな目立つところに長居してもいいことはない。 あの車で話を進めようか」 「え……? けど……」 レナは名残惜しそうに人形の下半身を抱きしめる。 その行為には理解できないが、彼女にとっては大事な物なのだろうとC.C.は判断した。 するとヴァンがなにかに気づいたように、C.C.を後ろから追い越す。 C.C.とレナが顔を向けると、ヴァンが海の方向へ指を指した。 「なあ、あれはなんだ?」 ヴァンの導き通り視線を向けると、海上に赤く輝いて浮かぶ宝石が存在してた。 □ レナは後部座席で揺られながら、同行することになったヴァンとC.C.に今までの出来事を説明していた。 真紅が残したと思われる赤い宝石は、ヴァンが鞭のような武器を使って回収してくれた。 レナをすぐに殺さなかったことから、殺し合いには乗り気でないとレナは判断をする。 真紅の形見と言うべき下半身と宝石を抱きながら、レナは現状を説明し終えた。 「これが、レナが今まで出会った出来事です」 いつもの活発さはなりを潜め、C.C.たちに説明を終えた。 C.C.の様子を伺うと、特に感情が浮かんではいない。話を聞いていたはずのヴァンも無反応だ。 「それで、後藤という奴で覚えていることはそれだけか?」 C.C.の冷たささえ感じる声がレナに向けられる。 綺麗な外見に伴い、鈴を転がすような声が余計冷たい印象をレナへもたらせた。 (真紅ちゃんが……人が死んだのに……) 二人とも反応が薄すぎるのである。後藤というバケモノも理解できなかったが、目の前の二人の反応も理解ができない。 レナは真紅と過ごしてきたため思い入れが強い、という部分を除いても人死に対する反応が二人はあまりにも平然としすぎている。 死体を見ていないとはいえ、二人はあまりにもドライすぎた。まるで誰か殺したかのように。 レナの警戒心が膨れ上がる。これは彼女の世界に起こっている奇病のせいではない。 単純に平和な日常を過ごしてきた(と、いっても彼女たちの場合は特殊だが)レナの常識と、人死が珍しくない世界にいた二人では死に対する認識が違うのだ。 さらにいうなら、レナの知るところではないがC.C.は悠久とも言える時を過ごし死による別離は珍しくなかったし、死が訪れない自身に死を望んでいることもある。 ヴァンの方はもともと甘いところがあるとはいえ、復讐鬼だ。 どうしても人死にに対する反応が違ってくる。 だからだろう、どうしてもレナは問わずにいられなかった。 「……どうして……そんなに平然としていられるの……?」 C.C.の顔に疑問符が浮かんでいる。ヴァンは相変わらず運転に集中していた。 レナの瞳から涙がこぼれ落ち、スカートの裾を強く握る。 そこで始めてヴァンがうろたえる様子を見せたが、レナの涙は止まらない。 「お、おい。なに泣かせてんだよ、お前」 「うるさい。静かにしろ、ヴァン」 ヴァンの言葉をC.C.があっさり切り捨て、押し黙る。C.C.はそれ以上しゃべらない。 レナの口が開き、想いを吐露した。 「おかしいよ! C.C.さんも、ヴァンさんも! 真紅ちゃんが死んじゃったのに、聞くのは後藤って奴のことばかり! 人が一人死んでいるんだよ……真紅ちゃんはさっきまでおしゃべりしてたのに……写真までとって……」 レナの言葉がしゃっくりで中断され、嗚咽が漏れた。 吐き出すものを吐き出さなければ頭がどうにかなりそうだった。 C.C.はただその様子を黙って見届けている。ヴァンは気まずそうにしているがレナは気づかない。 気まずい空気のまま、車内にはレナの泣き声だけが響いていた。 最悪の雰囲気で進む車内の中、ヴァンは思わずため息をついた。 腹が減っていたからC.C.のくれたピザに飛びついた。それは運の尽きだったかなあ、と現状を分析する。 ヴァンにとってはC.C.は偉そうな女で、レナはいきなり泣き出して理解が追いつかない相手であった。 正直逃げたくてたまらない。 基本適当なくせに、妙に律儀なヴァンはそれでもピザをもらったぶんは働こうと運転を続ける。 C.C.の目的からすれば、ルルーシュに再会するまではこき使われる運命であろう。 正直そんなのゴメンである。ヴァンの目的はあくまでカギ爪の男への復讐だ。 確か衛星から降り立ち、地球へ落下したところまでは覚えている。その後カギ爪の男やレイはどうなったか。 まあ、レイに関しては本人に再会したときにでも聞けばいい。素直に告げるとは思ってはいないが。 肝心のカギ爪の男はミハエルか、自分を連れてきたV.V.という奴にでも尋ねるくらいしかないか。 なんとも、復讐とはままならないものだ。 ヴァンが天を仰いでテンガロンハットを深く被る。チリン、と鈴のような音をリングが鳴らし、横目でレナを見た。 目を真っ赤に腫らしてそっぽを向いている。C.C.は特に気をかけるわけでもない。 ヴァンははあ、ともう一度ため息を付いて口を開いた。 「えーと、お前さん……確か名前は……」 「レナだ、ヴァン」 「そうそう。あんた……なんで怒っているかわからないけど……その、すみません」 妙なタイミングで謝るヴァンの行為は、レナの不信を加速させる行為以外なにものでもなかった。 C.C.の絶対零度の視線がヴァンを貫いているが、なにを怒っているのかヴァンには心当たりがない。 ただまあ、やることはやった。後は知るか、という気分である。 ヴァンという男、一言で言えば「バカ」であった。 最悪な雰囲気のまま、フォークリフトがいく。 次々移り変わる風景も、肌を撫でる風の感触もこの空気を吹き飛ばすには足りない。 ひとえに、三人はタイミングが悪かった。 レナと出会うのが真紅が生きているときであれば、真紅の死に整理がついたときなら、また別の付き合いもあっただろう。 C.C.はメンタルケアなど興味がないタイプだし、ヴァンはそういう他人の心理の機微に疎い。 このチームが雰囲気最悪になるのは当然の流れだ。関係を修復もできない、する暇もなく招かねざる客は現れる。 フォークリフトが動きを止めて、C.C.が怪訝な表情を浮かべた。レナも風景に向けていた視線をやめて、運転席を見る。 「見つけた……」 ヴァンが静かにつぶやき、運転席から跳躍する。 人間とは思えない脚力に感心しながらも、二人の女性はヴァンが降り立った先を見た。 白と青の法衣に似た衣装を着る金髪の少年が、整った顔立ちを歪ませてヴァンを睨んでいる。 隣にいる黒髪黒目の大人しそうな青年は黙って佇んでいた。 ヴァンが刀を抜刀し、切っ先を金髪の青年へ向ける。 「バカ兄貴、カギ爪の男の居場所を知っているならとっとと吐きやがれ!」 「お前に兄といわれるいわれはないし、知っていても同志の居場所を教える気はない、ヴァン!」 互いに苛立った視線を交わし罵り合う。 C.C.はレナの不信感が増しているのを察しながら、ブリッツスタッフを取り出した。 □ 「あのシャドームーン……もう追ってこないかも……」 「油断は禁物です。あと三十分ほどフライングボートで先に進んでから休みましょう、東條さん」 ミハエルの言葉に東條は素直に頷いた。この殺し合いの現場に来ての始めての理解者だ。 互いに互いを信頼し、同じ夢に向かう連帯感に包まれていた。 もともと、ミハエルも東條も誰かに依存して生きてきた。 育ちや生まれの不遇さも手伝ってか、強いカリスマ性をもつ誰かを指針に生きる二人はよく似ている。 ゆえに二人が意気投合するのも無理からぬことであった。 「二時間変身はできない……か。変な制限が加えられているね」 「正確には変身で一時間、ファイナルベントでもう一時間制限が加えられる。私に支給されたナイトのデッキには説明書が付随されていたが、東條さんにはその説明がないとは危うかった。 早く合流出きてよかったよ」 「それはこっちの台詞……」 フフ、と二人が微笑みあう。その姿はまるで旧来の友のようだった。 出会って数時間というのが信じられないくらいである。 「なら、変身できるまであと三十分くらいかな」 「放送を挟んでしまうか。東條さん、放送に流れる名前を決して忘れないようにしよう」 「うん。彼らはみんな、僕たちの心の中に生き続けるんだね」 東條の言葉にミハエルは神妙に頷いた。死んでいった彼らは同じ夢をみる同志。 心の中で生きる彼らを連れて、同志のもとへ帰ることこそ彼らに報いることだとミハエルは信じている。 ゆえに、フライングボートを進ませていたミハエルの表情がより一層歪んだ。 トロトロと走るフォークリフト。その運転席に座る黒いタキシードに、テンガロンハットを被る独特のファッションの男。 「あいつは……ッ!」 「どうしたの? ミハエルくん」 「ヴァン……東條さん、我々の夢を邪魔する敵ですッ!」 東條が顔を引き締め、ミハエルはフライングボードを止めた。 カードデッキはまだ使えない。仕込み杖の刃を剥き出しにして、ミハエルは跳躍する。 刀に擬態した銃を東條が構えて援護する姿勢をみせてくれた。 東條の行為に喜ばしいものを覚えながら、ミハエルは同じく跳躍してきたヴァンへ刃を向ける。 シャドームーン戦の疲労と怪我があるため無理はしない。 まずはカードデッキが使える時間をかせぐか、とミハエルは思考しながら言葉を荒くする。 「バカ兄貴、カギ爪の男の居場所を知っているならとっとと吐きやがれ!」 「お前に兄といわれるいわれはないし、知っていても同志の居場所を教える気はない、ヴァン!」 放送も近いのに、とミハエルが奥歯を噛んだ。 ヴァンの向ける怒りの視線を受け止めながら、ミハエルは嫌な奴に再会したと吐き捨てたくなった。 (自分から殺し合おうとしている……?) レナは眼前の光景にヴァンたちに対する不信を募らせていった。 レナを殺さなかったことからヴァンたちは殺し合いに乗っていないと判断したのだが、それは間違いなのではないだろうか。 現に今、ヴァンは刀を金髪の青年に向けて殺意を向けている。 C.C.もそれを止めるわけでもなく、フォローするように動いていた。 普通ならC.C.の動きは援護だと判断出来なかっただろう。レナたちの間には『部活』といった遊びがある。 部活の内容はたいがい戦いとは無縁の遊びだが、サバイバルゲームのような種目だって存在する。 そのときのレナが誰かを援護する動きに、今のC.C.の立ち回りは似ていたのだ。 「だいたい、アナタ方もなんでこんなバカで乱暴で無鉄砲な考えなしと行動をともにしているのですか!?」 「まあ、少なくともお前みたいな甘ちゃん坊やよりは使えそうだからな。死にたくなければ持っている情報を吐くといい」 「くっ……これだから……ッ!」 C.C.がミハエルを煽るように杖を構えている。レナはますます嫌悪感をあらわにしてC.C.たちと距離をとった。 C.C.はヴァンを止めることもなく、むしろ乗り気のように見える。 真紅の命を奪った、この理不尽な殺し合いにだ。 (駄目だ、冷静にならなくちゃ……。圭一くんならこんなときどうするのかな……) レナはこみ上げる嫌悪感を飲み下し、真紅のローザミスティカを握って現状を冷静に見極めようと周囲を見渡す。 再度繰り返すがレナがヴァンたちを信用しないのは、疑心暗鬼を加速する奇病が発生したためではない。 ヴァンが元来の世界の敵で出会ったこと。C.C.が人死に対しドライであること。 真紅という心を許した相手が死んだ直後と、最悪の条件が重なっただけだ。 放送の時は迫る。あがる名前に彼女の知り合いは多くいた。 今の余裕のない彼女は、その放送でどう動くのか。 一触即発の状況が余計彼女を追い詰めていた。 「まあ、少なくともお前みたいな甘ちゃん坊やよりは使えそうだからな。死にたくなければ持っている情報を吐くといい」 「くっ……これだから……ッ!」 C.C.は挑発的な物言いをしながらも、視線はミハエルに向けていなかった。 この言葉を発したのは理由がある。後ろにいるレナであった。 彼女はC.C.たちを信頼していない。そのことについてレナを責める気はC.C.にはなかった。 だが、レナを保護する気もC.C.にはない。 倫理観が強く殺人を忌避している状態では足手まといになる可能性が多い。 C.C.たちを嫌っているなら早く離れて欲しい。彼女が心中を吐露したときなにもフォローしていなかったのは、レナの離脱を確定事項と決めたからだ。 どの道、C.C.もルルーシュも血に染まった道をいかねばならない。ヴァンも似たようなものだろう。 中途半端な倫理観を振りかざすなら、離れた方が互いのためだ。 一人になったレナが殺人者に殺されるかも知れないが、そんなのは運だ。C.C.の責任ではない。 C.C.はレナへの意識を離し、ミハエルの後方で銃を構えている黒髪青年を見つめる。 刀に偽装しているが銃口があることをC.C.は目ざとく見つけていた。 当面の相手はあいつか、と杖を構えてC.C.はため息をついた。 C.C.とて殺し合うのは趣味じゃない。ヴァンにとって相手をしないとならないとは、厄介ごとを持ち込む男だ。 放送を前にしながら、C.C.はただ目の前の敵から視線を外さずにいた。 五人の思惑は交差する。 それぞれ自分のために、あるいは他人のために殺し合いという場に立ち会っていた。 そこにあるのは様々な欲望だ。 欲望を欲望と気づかぬもの、欲望だと本能でさとるもの、欲望を冷たく突き放すもの、他者の欲望に理解が追いつかぬもの。 渦巻く感情を前に、放送が訪れるのはあと――――。 【一日目 早朝/F-2 西部】 【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】 [装備]:無し [所持品]:支給品一式、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、サタンサーベル@仮面ライダーBLACK 空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、真紅の下半身@ローゼンメイデン、真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン フォークリフト@ガン×ソード(後部座席) [状態]:健康、悲しみ [思考・行動] 1:この場からどう動けばいいか考える。 2:圭一、魅音、詩音、沙都子、悟史と合流する。 3:翠星石と蒼星石も探す。 4:ヴァン、C.C.、ミハエル、東條、水銀燈、後藤を警戒。 [備考] ※この会場の西端と東端、北端と南端は繋がっています。 どこかの端からエリア外に出ると、逆の端の対応する位置へとワープします。 【ヴァン@ガン×ソード】 [装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-、菊一文字則宗@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- [所持品]:支給品一式、調味料一式@ガン×ソード [状態]:健康 [思考・行動] 1:ミハエルをとっちめてカギ爪の男の居場所を吐かせる。 2:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。 3:レイが気にならない事もない。 [備考] ※23話「みんなのうた」のミハエル戦終了後より参戦。 ※ヴァンはまだC.C.、竜宮レナの名前を覚えていません。 【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ R2】 [装備]:ブリッツスタッフ(アイテム効果:炎・中ダメージ、MP消費小 品質:最高魔力)@ヴィオラートのアトリエ [所持品]:支給品一式、エアドロップ(アイテム効果:水中呼吸が出来る)×3@ヴィオラートのアトリエ、ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2 [状態]:健康 [思考・行動] 1:生還し、不老不死のコードをルルーシュに譲渡することで自身の存在を永遠に終わらせる。 2:ルルーシュと合流する。 3:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない。 4:後でピザを食べる。 5:後藤は警戒する。 [備考] ※TURN11「想いの力」終了後、日本に戻る前から参戦。 ※不死でなくなっていることに気付いていません。 【ミハエル・ギャレット@ガンソード】 [装備]:フライングボード@ヴィオラートのアトリエ [所持品]:支給品一式、カギ爪@ガンソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、仕込み杖@るろうに剣心 [状態]:疲労(大)、全身打撲、三十分変身不可 [思考・行動] 1:カードデッキが使えるようになるまで時間を稼ぐ。 2:夢の障害となるヴァンを倒す。無理なら退く。 3:同志の下に帰る。 4:東條と共に1人でも多くの人を『救う』、だが無茶はしない。 【東條悟@仮面ライダー龍騎(実写)】 [装備]:レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード [支給品]:支給品一式×2(一つは沙都子の物)、タイガのデッキ@仮面ライダー龍騎、予備弾倉、ランダム支給品(確認済み)(1~3) [状態]:疲労(大)、全身打撲、三十分変身不可 [思考・行動] 1:全ての人を『救う』ことにベストを尽くして英雄になる。 2:ミハエルの援護をする。 ※TV本編死亡後よりの参戦です 時系列順で読む Back 寝・逃・げでリセット! Next 果てしない炎の中へ(前編) 投下順で読む Back 寝・逃・げでリセット! Next 果てしない炎の中へ(前編) 060 相乗りヘブン ヴァン 084 価値ある命 C.C. 055 少女と獣 竜宮レナ 070 Blood bath(後編) ミハエル・ギャレット 東條悟
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コードギアス 反逆のルルーシュからの支給品 ゼロの仮面 Lに支給 フルフェイスの黒い仮面。 左眼部分にはスライドシステムを搭載。 口元にはマイク(拡声器or/andボイスチェンジャー)が付いているため、これを被ると声を判別できなくなる。 ゼロのマント 泉新一に支給 ゼロ愛用、襟の高い黒いマント。 仮面も揃えれば貴方もゼロに大変身。 ゼロの銃 高良みゆきに支給 無印22話でゼロがユフィを殺害するのに用いたニードルガン。 セラミックと竹を使用しているため金属探知器では探知できない。 ピザ C.C.に支給 C.C.の大好物。 咲世子の煙球×3 ジェレミア・ゴットバルトに支給 名前通り篠崎咲世子が愛用している煙球で、R2の14話にて使用。 投げると白煙が立ち込める。
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◆0RbUzIT0To氏 氏が執筆した作品 002 青虎、闇夜にて、英雄を論ず 012 苦労をするのはいつだって良識ある常識人 氏が執筆したキャラ 一回 東條悟、北条沙都子、蒼星石、橘あすか、織田敏憲 名前 コメント
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◆.RZBeyQMjU氏 氏が執筆した作品 019 深夜の狂気 氏が執筆したキャラ 一回 真紅 名前 コメント